懲戒処分

なぜ審査は二段階なのか|綱紀委員会と懲戒委員会の役割分担

弁護士マップ編集部
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懲戒請求を出すと、すぐに処分の是非が判断されるわけではありません。間に一つ、別の委員会が挟まります。

弁護士会に置かれているのは、綱紀委員会と懲戒委員会の二つです。名前が似ているうえに、どちらも懲戒に関わるため混同されがちですが、役割はまったく違います。

条文が定める流れ

弁護士法58条2項は、懲戒請求があったとき、弁護士会は事案を懲戒の手続に付し、綱紀委員会に調査をさせなければならないと定めています。請求は、まず綱紀委員会に渡ります。

続く3項では、綱紀委員会が調査の結果「懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当と認めるとき」はその旨の議決をし、弁護士会はその議決に基づいて懲戒委員会に審査を求めなければならない、とされています。

そして4項が、逆の場合を定めています。請求が不適法であるとき、懲戒の手続を開始することができないとき、懲戒の事由がないと認めるとき、事案の軽重その他の情状を考慮して懲戒すべきでないことが明らかであるとき——これらに当てはまるときは、審査を求めないことを相当とする議決をします。

つまり綱紀委員会は「本審査に進めるかどうか」を決める場所で、処分そのものを決める場所ではありません。処分の内容を決めるのは懲戒委員会です。

綱紀委員会が見ているもの

綱紀委員会の仕事は、持ち込まれた主張に、審査に進めるだけの中身があるかを確かめることです。

具体的には、請求書に書かれた事実を確認し、対象の弁護士から説明を求め、必要に応じて請求した人にも事情を尋ねます。書面のやり取りが中心で、当事者が対面で議論する場が必ず設けられるわけではありません。

ここで見られているのは、主張されている事実が本当にあったのか、あったとしてそれが規律違反にあたるのか、という二点です。事実が確認できなければ先に進みませんし、事実が認められても規律違反と評価できなければ同じです。

日弁連が公表した2024年の集計では、弁護士会で処理された事案のうち「懲戒しない」となったものが3,103件、懲戒処分に至ったものが99件でした。多くの事案は、この最初の段階で終わっています。

懲戒委員会が見ているもの

綱紀委員会が「審査相当」と議決すると、事案は懲戒委員会に移ります。ここでようやく、処分するかどうか、するとしてどの処分かが審理されます。

弁護士法57条が定める処分は、戒告、2年以内の業務の停止、退会命令、除名の4種類です。業務停止であれば何か月なのか、退会命令にまで至るのか——重さの判断もこの段階で行われます。

対象となる弁護士には、意見を述べ、証拠を出す機会が保障されます。職を失いかねない判断を下す手続ですから、慎重に組まれています。

なぜ、わざわざ二段階にするのか

一つの委員会でまとめて判断すればよさそうに思えます。しかし、懲戒請求が「何人も」できる制度であることを思い出すと、二段階の意味が見えてきます。

誰でも請求できるということは、根拠の薄い請求や、感情から出た請求も同じ入口から入ってくるということです。それらをすべて本審査にかければ、対象となった弁護士は、内容の当否が確かめられる前から重い手続に長期間さらされます。処分に至らなかったとしても、その負担は回復されません。

先に述べたとおり、日弁連の集計では2024年に処分に至ったのは99件でした。同じ年の新受件数は3,243件です。母集団も期間も完全には一致しませんが、持ち込まれる事案と処分に至る事案の間に大きな開きがあることは読み取れます。この開きを、対象弁護士の負担を抑えながら扱うための仕組みが、ふるいとしての綱紀委員会です。

同時に、この二段階は請求する側の保護にもなっています。綱紀委員会が「審査を求めない」と議決しても、そこで終わりではありません。日弁連への異議の申出という次の段階が用意されており、判断はもう一度別の目で点検されます。

委員会は弁護士だけで構成されているわけではない

同業者が同業者を審査する構造への疑問に対しては、委員の構成という形で手当てがされています。審査を担当する委員会には、弁護士以外の委員も加わります。

さらに、弁護士会の判断に納得できない場合の最終段階として、日弁連には綱紀審査会が置かれています。この委員会は、弁護士・裁判官・検察官およびそれらの経験者を除いた学識経験者だけで構成されます。法律家ではない立場からの点検を最後に置くことで、内部で完結しない構造にしています。

時間がかかることを前提に

書面のやり取りを重ね、両当事者に機会を与えながら進む手続ですから、結論が出るまでには相応の時間がかかります。日弁連の集計でも、年をまたいで未済として残る事案が毎年一定数あります(2024年末時点で217件)。

急いで結果がほしい、あるいは金銭を早く取り戻したいという目的であれば、懲戒請求は適した手段ではありません。目的に合った窓口を選ぶことが、結果的に近道になります。

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