「撮影に応じてしまった自分にも責任があるから、誰にも相談できない」──リベンジポルノ被害に遭った方の多くが、この考えにとらわれて動けなくなります。
しかしこれは法律的には誤解です。撮影に同意していたことと、公開に同意していないことは、まったく別の問題です。交際中に合意のうえで撮った写真であっても、別れた後に相手が無断で公開すれば、それは被害です。いわゆるリベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)は、まさにこうしたケースを想定して作られました。撮影時の経緯を理由に、あなたが泣き寝入りする必要はありません。
この記事では、被害への対応を「拡散を止める」「相手の処罰を求める」「金銭的な賠償を求める」の3つのルートに分けて説明します。この3つは別々の手続きで、全部やることも、一部だけやることもできます。
ルート1:拡散を止める(削除)
被害に気づいたとき、多くの方が最優先したいのは「一刻も早く消したい」ということでしょう。削除には複数の窓口があります。
- プラットフォームへの通報:主要なSNSや動画サイトには、性的画像の無断公開を報告する通報フォームがあります。リベンジポルノ系のコンテンツは多くのサービスで明確な規約違反であり、通報で削除される例は少なくありません
- 相談機関を通じた削除支援:違法・有害情報の通報を受け付ける公的・準公的な相談窓口があり、サイト運営者への削除依頼を支援してくれます。総務省が案内している違法・有害情報相談センターや、法務局のインターネット人権相談窓口が入口になります
- 送信防止措置依頼:プロバイダ責任制限法にもとづき、サイト管理者やサーバー運営者に対して正式な書面で削除を求める手続きです。自分でもできますが、書式や送り先の調査が必要で、弁護士に依頼するケースも多い手続きです
ここでひとつ、重要な注意があります。加害者本人に自分で「消して」と連絡するのは、慎重に考えてください。 相手が逆上して拡散を広げたり、「消してほしければ会え」などと新たな要求の材料にされたりする危険があります。特に相手からの脅しがすでにある場合、本人との直接交渉は避け、警察や弁護士を間に入れるべき場面です。
ルート2:処罰を求める(刑事)
リベンジポルノ防止法は、第三者が撮影対象者を特定できる形で私事性的画像を提供・公開する行為などを処罰の対象としています。このほか、状況によって次のような罪が問題になり得ます。
- 「ばらまくぞ」と脅された場合の脅迫罪や強要罪
- 投稿に中傷が伴う場合の名誉毀損罪
- 被写体が18歳未満の場合の児童ポルノに関する法律違反(これは被害者自身が18歳未満のときに撮影された画像にも関わります)
警察への相談は、緊急でなければ警察相談専用電話「#9110」か、各都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口が入口です。脅迫が進行中であるなど身の危険を感じる状況なら、ためらわず110番してください。
警察に相談する際は、次のものを持参できると話が具体的に進みます。
- 画像が公開されているページのURLとスクリーンショット
- 相手とのやり取りの履歴(脅迫めいたメッセージがあれば特に重要)
- 相手の氏名・連絡先など特定につながる情報
なお、証拠保全のためであっても、問題の画像を何度も複製して持ち歩くことには心理的な負担も伴います。URLと最低限の記録を確保したら、扱いに迷う部分は警察や弁護士の指示を仰ぐ形で構いません。
ルート3:賠償を求める(民事)
公開した相手が分かっている場合は、慰謝料などの損害賠償を請求できます。問題は、匿名アカウントや匿名掲示板で拡散されたケースです。この場合、投稿者を特定するために発信者情報開示という法的手続きが必要になります。裁判所を通じてサイト運営者や通信事業者から投稿者の情報の開示を受ける手続きで、現在は開示命令という比較的使いやすい制度も整備されています。
ただし、開示手続きには通信記録の保存期間という時間の制約があります。事業者側のログは一定期間で消えてしまうため、投稿者の特定を考えるなら、被害に気づいてから可能な限り早く動くことが結果を左右します。数か月放置してからでは、特定の手がかりが失われていることがあります。
誰に相談するか──使い分けの目安
- まず状況を聞いてほしい・削除の方法を知りたい → 違法・有害情報相談センター、法務局の人権相談(いずれも無料)
- 相手を処罰してほしい・脅されている → 警察(#9110、緊急時は110番)
- 匿名の投稿者を特定したい・賠償を請求したい・削除を法的に強制したい → 弁護士
弁護士を探す場合は、削除請求や発信者情報開示の取扱い実績がある事務所を選ぶことが重要です。この分野は手続きの期限やプラットフォームごとの実務に精通しているかどうかで結果が変わります。弁護士を検索で取扱い分野を確認し、依頼前には懲戒処分データベースで気になる点がないかも見ておくと安心です。費用は削除だけか特定・賠償まで進むかで大きく変わるため、費用相場も参考にしてください。
また、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(全国共通番号「#8891」)は、心理的なケアも含めて相談に乗ってくれる窓口です。法的手続きに進む気力がまだ湧かない段階でも、ここに電話することはできます。
削除できた後の「再アップ」に備える
無事に削除できても、被害者を悩ませるのが再アップロードの不安です。完全にゼロにする保証はどこにもありませんが、備え方はあります。
- 自分の名前やハンドルネームでの定期的な検索は、頻度を決めて機械的に行う(四六時中検索し続けると心が持ちません)
- 再発見した場合に備えて、一度使った通報フォームや依頼書のひな形、経緯のメモを手元に整理しておく(2回目以降の対応が格段に速くなります)
- 弁護士に依頼した場合、再アップ時の対応をどこまで含むのか、追加費用の有無を契約時に確認しておく
また、加害者との間で示談をする場合には、画像データの廃棄や再投稿の禁止、違反時の違約金といった条項を盛り込むことが考えられます。こうした条項設計は弁護士の腕の見せどころでもあります。
今日できる3つのこと
長い記事を読む気力がない状態かもしれません。最低限、今日はこの3つだけ。
- 公開されているページのURLを控える(スクリーンショットも撮れれば撮る)
- 相手に自分から連絡するのをやめる(既に脅されているなら、やり取りは消さずに残す)
- どこか1か所に電話する(迷ったら#9110か、性被害のワンストップ支援センター#8891)
よくある不安への答え
「家族や職場に知られずに進められますか」
削除の依頼や弁護士への相談は、あなたと相談先の間で完結します。刑事事件として立件され裁判になる場合には手続き上の配慮を検討する必要がありますが、被害者のプライバシー保護のための運用(氏名を明かさない措置など)が用意されている場面もあります。知られたくないという事情は、最初の相談時に率直に伝えて構いません。
「相手が海外のサイトに投稿していたら手遅れですか」
手続きの難易度は上がりますが、手遅れとは限りません。海外の大手プラットフォームの多くは日本からの削除依頼や法的手続きに対応する窓口を持っており、実務の蓄積もあります。個人運営の悪質サイトはより厄介ですが、検索結果からの削除(検索エンジンへの申請)で実質的な被害を減らす方法もあります。
「お金がありません」
無料の窓口だけでも、削除支援・警察対応・心理的ケアまでは進められます。弁護士費用については、法テラスの立替制度や、自治体・弁護士会の無料相談を入口にする方法があります。「費用が払えないから何もできない」ということはありません。
「もう何年も前の画像です」
古い画像でも、現に公開され続けているなら削除を求めることはできます。一方、投稿者の特定(発信者情報開示)は通信記録の保存期間の壁があるため難しくなっている可能性があります。何ができて何が難しいかは状況次第なので、諦める前に一度相談してみてください。
最後に
被害はあなたの落ち度ではありません。動き出すのが早いほど、取れる手段は多く残っています。ひとりで抱えず、無料の窓口への電話一本から始めてください。