不動産・住まい

欠陥住宅・施工不良に気づいたら|契約不適合責任の基本

弁護士マップ編集部
6分で読める

引っ越して最初の梅雨、天井の隅にシミが広がっているのを見つけた。ビー玉を床に置くと、ゆっくりと同じ方向に転がっていく。壁の中を確認したら、あるはずの断熱材が入っていなかった――。

夢だったはずのマイホームで欠陥に気づいたとき、多くの人は「どこに、いつまでに、何を言えばいいのか」が分からず時間を浪費してしまいます。そして住宅の欠陥トラブルでは、この「いつまでに」が決定的に重要です。この記事では、欠陥住宅の法的な枠組みである契約不適合責任を軸に、気づいた直後にやるべきことから解決までの道筋を解説します。

「契約不適合責任」とは:欠陥住宅トラブルの土台

2020年に施行された改正民法で、かつて「瑕疵担保責任」と呼ばれていた制度は「契約不適合責任」に生まれ変わりました。売買や請負の目的物が、種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないとき、売主や請負人(施工会社)が責任を負う、という制度です。

買主・注文者が行使できる権利は主に4つあります。

  • 追完請求:補修や代替物の引き渡しを求める(住宅なら基本は補修請求)
  • 代金減額請求:補修に応じない場合などに、代金の減額を求める
  • 損害賠償請求:欠陥によって生じた損害の賠償を求める
  • 契約解除:欠陥が重大で契約の目的を達せられない場合など

「瑕疵担保」時代と比べ、補修請求(追完請求)が明文で認められた点は、買主にとって使いやすくなった部分です。いきなり「金を返せ」ではなく、「直してほしい」から始められる建て付けになっています。

最重要ポイント:「知ったときから1年以内の通知」

契約不適合責任には、時間の壁があります。買主が不適合を知ったときから1年以内に、その旨を売主に通知しないと、原則として責任を追及できなくなるのです(売主が不適合を知っていた場合などの例外はあります)。

ここでの通知は、裁判を起こすことまでは要求されませんが、後から「言った・言わない」にならないよう、書面やメールなど記録が残る形で、どの部分にどんな不適合があるのかを具体的に伝えておくべきです。「なんとなく様子を見ているうちに1年経ってしまった」が最悪のパターンです。

なお、契約書で契約不適合責任の期間を短くする特約や免責特約が定められていることがあります。特約の有効性は売主が誰か(後述)によって扱いが変わるため、まず契約書の該当条項を確認してください。

新築住宅なら「品確法の10年」も使える

新築住宅には、民法とは別に住宅品質確保促進法(品確法)による保護があります。構造耐力上主要な部分(基礎、柱、梁など)と雨水の浸入を防止する部分(屋根、外壁など)については、引き渡しから10年間、売主・施工会社が責任を負うことが法律で義務づけられており、これを特約で短縮することはできません。

つまり、新築で「構造」か「雨漏り」に関わる欠陥であれば、契約書に何と書いてあっても10年間は責任追及の土台があります。また、新築住宅の事業者には保険加入または供託が義務づけられており(住宅瑕疵担保履行法)、事業者が倒産していても保険から補修費用が支払われる道があります。

売主が宅建業者の中古住宅の場合も、契約不適合責任を全部免責にすることは宅建業法の規制で制限されています。一方、個人間売買では免責特約が有効になりやすく、この違いが結論を大きく分けます。

気づいた直後にやること:5つの初動

  • 写真・動画で記録する:日付が分かる形で、症状の全景と接写を撮ります。雨漏りなら雨の日の動画が有力な証拠になります。
  • 症状の経過メモをつける:いつ気づいたか、どう広がっているか。「知ったとき」の起算点の記録にもなります。
  • 契約書類一式を揃える:売買契約書・請負契約書、重要事項説明書、設計図書、仕様書、アフターサービス基準書。
  • 売主・施工会社に書面で通知する:1年の通知期間対策として、症状を特定して早めに伝えます。
  • 自分で補修を発注する前に立ち止まる:先に直してしまうと、欠陥の証拠が失われ、原因の立証が難しくなります。緊急の応急処置が必要な場合も、施工前後の記録を必ず残してください。

建築士による調査:紛争の勝敗を分ける工程

欠陥住宅の争いは、「その症状が施工不良によるものか」という技術論が中心になります。ここで力を発揮するのが、売主側と利害関係のない建築士による調査(ホームインスペクション、欠陥調査)です。

調査報告書は、交渉の説得力を大きく変えます。売主側の「経年劣化です」「使い方の問題です」という定番の反論に対し、第三者の技術的見解で応じられるかどうかが分かれ目です。費用はかかりますが、症状が構造や雨漏りに関わる場合は、調査を先行させる価値が高いといえます。

交渉から解決までのルート

  • 直接交渉:調査報告書を添えて補修または賠償を求めるのが出発点です
  • 住宅紛争の相談・あっせん機関:住まいるダイヤル(住宅リフォーム・紛争処理支援センター)では、電話相談のほか、一定の住宅について弁護士と建築士による紛争処理手続きが利用できます
  • 建設工事紛争審査会:請負契約のトラブルについて、あっせん・調停・仲裁を行う公的機関です
  • 訴訟:金額が大きい、争いが激しい場合の最終手段です。技術的争点が多いため、審理は長期化しやすい分野です

弁護士に相談すべきタイミングは、「売主側が責任を否定してきたとき」または「補修だけでは済まない損害(住み替え費用、健康被害など)が生じているとき」が一つの目安です。建築紛争は弁護士の中でも取扱い経験の差が出やすい分野なので、建築・不動産関係の取扱い実績を確認して選ぶことをおすすめします。弁護士を検索で候補を探し、口コミ一覧懲戒処分データベースもあわせて確認しておくと安心です。

この記事の要点

  • 欠陥住宅の法的枠組みは契約不適合責任。補修請求・代金減額・損害賠償・解除の4つの手段がある
  • 「知ったときから1年以内の通知」が生命線。記録が残る形で早めに通知する
  • 新築の構造・雨漏りは品確法で10年。特約でも短縮できない
  • 勝敗を分けるのは技術的な証拠。補修の前に記録と第三者調査を
  • 個人間売買の免責特約など、責任追及が難しいケースも存在する。早期に見通しを立てることが重要

住宅の欠陥は、放置すれば症状が進み、時間が経てば権利が消えていきます。「おかしいな」と思った日が、動き始めるべき日です。

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