借金・債務整理

過払い金はまだ請求できる?対象になる人・ならない人

弁護士マップ編集部
6分で読める

「過払い金はもう終わった話」——半分正しく、半分間違い

テレビCMやラジオで盛んに流れた「過払い金」の広告。あれを聞いて「自分には関係ない」「もうブームは終わった」と思っている人は多い。実際、過払い金が新たに発生する取引は今では基本的に存在しないので、「終わった話」という感覚は半分正しい。

しかし、もう半分は間違いだ。過払い金の請求権は「取引の終了(多くの場合は完済)から10年」は消えないのが原則とされてきた。つまり、昔の借入を最近まで返し続けていた人、あるいは完済してからまだ10年たっていない人には、今でも請求できる可能性が残っている。長年借りたり返したりを繰り返していた人ほど、この「取引の終了」が意外と最近だったりする。

この記事では、感情をあおらずに、対象になる人・ならない人の線引きと、請求する場合の注意点を整理する。

なぜ「払いすぎ」が生まれたのか:2つの法律の隙間

過払い金とは、法律の上限を超えて支払った利息のことだ。かつて日本には利息に関する2つの基準が併存していた。

  • 利息制限法:上限は年15〜20%(元本額による)。超過部分は民事上無効
  • 出資法(当時):上限は年29.2%。超えると刑事罰

この間の金利帯(年20%超〜29.2%以下)は、民事上は無効なのに刑事罰はないという曖昧な領域で、「グレーゾーン金利」と呼ばれた。多くの消費者金融やカード会社のキャッシングが、この金利帯で貸し付けていた。

その後、最高裁判所の判決を経てグレーゾーン金利での受領が原則として認められなくなり、法改正によって2010年6月に上限金利が一本化された。これにより、グレーゾーン金利で払いすぎていた利息は、計算し直して返還を求められるようになった。これが過払い金請求だ。

対象になる可能性がある人:3つの条件で判定する

自分が対象かどうかは、次の3条件でおおまかに判定できる。

  • 条件1:借入の開始時期——2010年6月の法改正より前、実務的には2007〜2008年頃までに始めた借入か。多くの業者はこの頃までに金利を引き下げたため、それ以降に始めた借入では過払い金はまず発生しない
  • 条件2:借入の種類——消費者金融のキャッシング、クレジットカードのキャッシング枠が対象。ショッピング(リボ払い・分割払い)は借金ではなく立替金なので対象外。銀行のカードローンももともと上限内の金利なので対象外
  • 条件3:時効——取引の終了から10年以内か。10年を過ぎると原則として請求できない。なお、途中で完済してから再度借りた場合に取引を一連とみるか分断とみるかは争点になりやすく、素人判断で「時効だ」と諦めるのは早いことがある

3条件がそろいそうなら、正確な金額は取引履歴を業者から取り寄せ、利息制限法の上限で計算し直す(引き直し計算)ことで確定する。取引履歴の開示は本人でも請求できる。

対象にならない人・請求しても意味が薄い人

過度な期待を持たないために、対象外のケースも明確にしておく。

  • 借入がすべて2010年以降に始まった人
  • ショッピングリボの残高しかない人
  • 銀行カードローン・住宅ローン・自動車ローンだけの人
  • 完済から10年以上経過している人(時効の起算点に争いがある場合を除く)
  • 借入先の業者がすでに倒産している人(倒産手続きの配当でごく一部しか戻らないか、まったく戻らないことが多い)

最後の点は重要だ。過払い金は「請求すれば戻る」のではなく「相手に支払い能力があれば戻る」。かつての大手貸金業者の中には経営破綻した会社が複数あり、その場合の回収は大きく制限される。

見落とされがちなデメリット:返済中の請求は「債務整理」になる

過払い金請求のリスクはほとんど語られないが、1つだけ重大な分かれ目がある。完済後に請求するか、返済中に請求するかだ。

  • 完済後の請求:借金は存在しないので、信用情報に事故情報は登録されないとされる。デメリットは実質的に少ない(その業者との今後の取引に影響する可能性はある)
  • 返済中の請求:引き直し計算をしても残高が残る場合、手続きは実質的に任意整理となり、信用情報に事故情報が登録される可能性がある。過払い金で残高が完全にゼロになりお釣りが来る場合は登録されない扱いが一般的だが、計算してみるまで結果はわからない

つまり返済中の人は、「過払い金を取り戻す」つもりが「債務整理をした」扱いになる可能性を理解したうえで動く必要がある。もちろん、残高が大きく減るならそれ自体に価値があるので、一概に悪い話ではない。事前にリスク説明をきちんとしてくれる事務所を選びたい。

依頼先選びで確認すべきこと

過払い金はかつて広告合戦の激しい分野で、報酬体系や業務の質にばらつきがあった。依頼前に次を確認してほしい。

  • 報酬体系の内訳(着手金の有無、回収額に対する報酬割合、訴訟になった場合の追加費用)。事務所により異なるため、費用相場を目安に総額で比較する
  • 「訴訟までやるか、和解中心か」の方針。業者との交渉だけだと満額より低い水準での和解になることがあり、訴訟をすれば回収額が増える可能性がある一方で時間がかかる
  • 説明が誇張気味でないか。「必ず戻る」「あなたも数百万円」といったトーンの広告には距離を置く

依頼先の実績や評判は口コミ一覧懲戒処分データベースも参考になる。過去には過払い金バブル期の不適切な事件処理で処分を受けた例も報じられており、依頼先の確認はこの分野では特に意味がある。

まとめ:まず「取引の開始時期」と「完済時期」を思い出す

過払い金請求は、対象者が年々減っていく「時限つき」の権利だ。判定の入口はシンプルで、(1) 2000年代に消費者金融やカードのキャッシングを使っていたか、(2) その取引が終わってから10年たっていないか、の2点。心当たりがあるなら、契約書や明細が手元になくても取引履歴の開示から始められるので、債務整理・過払い金の取扱いが多い弁護士に弁護士を検索から相談してみてほしい。逆に条件に当てはまらない人は、広告に時間を使う必要はない。

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