「お金がないと弁護士に頼めない」は本当か
弁護士に依頼するには費用がかかる。着手金20〜30万、報酬金10〜30万、実費数万円——合計で50〜100万円という事案は珍しくない。
「お金がないから弁護士に頼めない」と諦めている人は実は多い。しかし、所得が一定以下ならほぼ無料で弁護士に依頼できる仕組みがある。法テラスだ。
2006年に開設された日本司法支援センターの愛称で、国が運営する法律支援機関だ。年間約30万件の相談を扱っている(法テラス公表数値)。仕組みを知らないだけで利用できないのはもったいない。
法テラスの3つのサービス
法テラスが提供する主要なサービスは大きく3つある。
1. 情報提供
法律問題に関する一般的な情報提供。電話・対面・メールで無料で利用できる。
- 「自分のケースはどんな制度を使えるか」
- 「どこに相談すべきか」
- 「必要な手続きの概要」
所得制限なしで誰でも利用できる。法律相談ではなく、あくまで一般情報の提供だ。
2. 民事法律扶助
民事案件(離婚、相続、債務整理、労働問題など)について、所得が一定以下の人に対する法律支援。
#### 提供内容
- 無料法律相談: 1回30分まで、同一事件で3回まで無料
- 弁護士費用の立替: 着手金・実費を法テラスが立替え、依頼者は月5,000〜10,000円から分割返済
#### 利用条件
- 月収・資産が法テラスの基準以下
- 勝訴の見込みがゼロでない
- 民事法律扶助の趣旨に適する
所得基準は地域・家族構成により異なるが、目安として:
- 単身者: 月収約20万円以下
- 4人家族: 月収約30万円以下
(具体的な数字は法テラス公式サイトで最新版を確認)
3. 国選弁護人(刑事事件)
刑事事件で弁護人を依頼できない被疑者・被告人に、国費で弁護人を付ける制度。法テラスが対応する弁護士を選任する。
所得制限はあるが、無罪推定の原則から比較的緩やかだ。
法テラスと私的弁護士の違い
法テラスを利用する場合と、自分で弁護士を選んで依頼する場合では、いくつかの違いがある。
| 比較項目 | 法テラス | 自分で選ぶ |
|---|---|---|
| 弁護士の選択 | 法テラスが選任 | 自由に選べる |
| 費用 | 立替後の分割返済 | 着手金一括 |
| 専門性 | 一般的な対応 | 専門家を選べる |
| 対応速度 | 手続きあり | 即依頼可能 |
| 所得制限 | あり | なし |
法テラスの利点
- 費用が大幅に抑えられる: 月5,000円から払えるので、初期負担が小さい
- 法テラスのスクリーニングを受けている弁護士: 一定の信頼性が担保
- 窓口が分かりやすい: 全国に拠点があり、相談先で迷わない
法テラスの制約
- 弁護士を選べない: 担当者は法テラスが決める。相性が悪い可能性
- 対応分野が限定的: 商業的事案や複雑な企業法務などは対象外
- 手続きに時間がかかる: 利用申請から弁護士面談まで数週間
どんなケースで法テラスを使うべきか
法テラスが向いているケース
- 所得が一定以下
- 急ぎでない一般的な案件(離婚、相続、消費者問題など)
- 弁護士費用の捻出が困難
- 初めての法律相談で、まず話を聞きたい
自分で弁護士を選ぶ方が良いケース
- 所得が法テラス基準を超える
- 特定の専門分野(医療過誤、知財、国際取引など)の知見が必要
- 緊急性が高い(明日が裁判期日など)
- 信頼関係のある弁護士に頼みたい
- 大規模な企業法務
法テラス利用後、弁護士マップとどう関係するか
弁護士マップは、自分で弁護士を選ぶときの情報源だ。法テラス利用の場合は弁護士をマッチングしてくれるため、弁護士マップの弁護士検索を使う場面は限られる。
ただし、次のような使い方は可能だ。
1. 法テラスを使うべきかの判断材料
弁護士マップで自分の案件分野の費用相場を確認し、自費負担が現実的か判断する。費用が高額になりそうなら法テラス利用を検討する。
2. 法テラス担当弁護士の事前確認
法テラスから紹介された弁護士の氏名が分かったら、弁護士マップで過去の懲戒処分歴を確認できる。法テラス契約弁護士でも、過去に処分歴がある場合は記録される。
3. 法テラス対象外の案件
商業的案件、所得超過のケース、緊急対応など、法テラスが使えない場合は、自分で弁護士を選ぶ必要がある。弁護士マップの弁護士検索が役立つ場面だ。
結論:知っているだけで選択肢が増える
法テラスは「お金がないから弁護士に頼めない」という障壁を大きく下げる仕組みだ。年間30万件の相談実績が示すように、確実に依頼者に届いている制度だ。
ただし、法テラスは万能ではない。所得が高い人、特定分野の専門家が必要な人、緊急対応が必要な人は、自分で弁護士を選ぶ方が適している。
両方の選択肢を知った上で、自分の状況に合った方を選ぶ。それが弁護士アクセスの最適な使い方だ。