不動産・住まい

不動産売買のトラブル|引き渡し後に問題が見つかったら

弁護士マップ編集部
5分で読める

中古住宅を買って3か月。台風の翌朝、2階の天井から水が滴っていた。床下を業者に見てもらうとシロアリの食害跡。さらに近所の人との立ち話で、この家で過去に事故があったらしいと聞いてしまった――。

不動産売買のトラブルの大半は、引き渡しの後にやってきます。そして買主が取れる手段は、「誰から買ったか」「契約書に何と書いてあるか」「いつ知ったか」の3つで大きく変わります。この記事は、この3つの分岐を軸に、引き渡し後のトラブル対応を整理します。

分岐1:売主は業者か、個人か

同じ雨漏りでも、売主が宅建業者か個人かで、法的な保護の厚さがまったく違います。

売主が宅建業者の場合

宅建業法により、業者が売主となる売買では、契約不適合責任の通知期間を「引き渡しから2年以上」とする特約を除き、民法より買主に不利な特約は無効とされます。つまり「契約不適合責任は一切負いません」という全部免責は認められません。買主にとっては比較的守られた立場です。

売主が個人の場合

個人間売買では契約自由の原則が働き、契約不適合責任を免除する特約も基本的に有効です。中古住宅の個人間売買では「売主は契約不適合責任を負わない」という免責特約が付いていることが珍しくありません。ただし免責特約があっても、売主が問題を知りながら告げなかった場合には、免責の効力が認められないとされています(民法にその旨の定めがあります)。「知っていて黙っていた」かどうかが、個人間売買の最大の争点になりやすい理由です。

分岐2:契約書に何と書いてあるか

対応を考える前に、必ず次の書類を読み直してください。

  • 売買契約書:契約不適合責任の条項(免責の有無、通知期間、責任の範囲)
  • 重要事項説明書:建物の状態、周辺環境、法令上の制限などの説明内容
  • 物件状況報告書(告知書):売主が「雨漏り:無」「シロアリ被害:無」などと申告した書面
  • 付帯設備表:設備の故障の有無についての申告

特に物件状況報告書は強力です。「雨漏り:無」と申告されていたのに実際は雨漏りしていた場合、契約内容との不適合を主張しやすくなり、売主が知っていた事情の裏付けにもなり得ます。

分岐3:いつ知ったか(時間制限)

契約不適合責任には、買主が不適合を知ったときから1年以内に売主へ通知するという時間制限があります(契約書でさらに短い期間が定められていることもあります)。通知は記録が残る形で、症状を具体的に特定して行ってください。「そのうち言おう」と先延ばしにするのが一番危険です。

心理的瑕疵・環境瑕疵:物理的な欠陥だけが問題ではない

不適合は、雨漏りやシロアリのような物理的なものに限りません。

  • 心理的瑕疵:過去の自殺・他殺・事故死など、心理的な嫌悪感を生む事情。国土交通省が宅建業者向けに告知に関するガイドラインを公表しており、告知すべき場合の考え方が整理されています
  • 環境瑕疵:近隣の嫌悪施設、著しい騒音・悪臭など
  • 法律的瑕疵:建て替えできない土地だった、法令上の制限の説明が不十分だった等

これらは「契約の内容に適合しているか」という枠組みで争われますが、物理的欠陥より評価が分かれやすく、事案ごとの判断になります。仲介業者の調査・説明義務違反が問題になるケースもあり、その場合は売主だけでなく仲介業者への責任追及も選択肢に入ります。

買主が使える手段と、現実的な進め方

契約不適合責任に基づき、買主は補修などの追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、そして不適合が重大な場合の契約解除を主張できます。進め方の実務は次のとおりです。

  • 症状の記録と原因調査:写真・動画を撮り、建物の不具合なら第三者の建築士やシロアリ防除業者などに調査と書面の報告を依頼します。「いつからあった不具合か」(引き渡し前から存在したか)が争点になるため、原因の見立ては専門家の書面で押さえます。
  • 書面での通知と請求:不適合の内容、調査結果、求める対応(補修か金銭か)、回答期限を明記して売主に送ります。仲介業者がいる場合は仲介業者にも共有し、対応を促します。
  • 交渉:金銭解決(補修費用相当額の支払い)で決着するケースが多数です。見積もりを複数取り、請求額の根拠を示せるようにします。
  • 交渉決裂なら:不動産の売買紛争は金額が大きくなりがちで、民事調停や訴訟が視野に入ります。この段階では弁護士への相談を強くおすすめします。

弁護士に相談する前に整理しておく5点

相談の質は準備で決まります。次の5点をメモにまとめて持参すると、初回相談で具体的な見通しまでたどり着きやすくなります。

  • 売主は業者か個人か、仲介業者はどこが入ったか(実名は相談時に伝えれば足ります)
  • 問題に気づいた日と、それをどう知ったか
  • 契約書・重説・告知書の該当条項(コピーを持参)
  • 調査報告書や見積もりなど、損害額の根拠
  • 希望する解決(直してほしいのか、お金なのか、契約をなかったことにしたいのか)

不動産売買のトラブルは、売主・仲介・買主の三者の主張が絡み、証拠の評価も技術的になりがちです。不動産取引の取扱いが多い弁護士を弁護士を検索で探し、費用感は費用相場で確認してください。依頼先を絞り込む際は懲戒処分データベースで処分歴を確認しておくと、より安心して選べます。

最後に:泣き寝入りの前に「3つの分岐」を確認

引き渡し後のトラブルは、「もう買ってしまったから」と諦められがちです。しかし、売主が業者なら全部免責は無効ですし、個人間でも売主が知っていた事情は免責されません。告知書に虚偽があれば、それ自体が交渉の強い足場になります。

まずは契約書類を机に並べ、「誰から買ったか」「何と書いてあるか」「いつ知ったか」の3点を確認する。そこから、あなたのケースで取れる手段が見えてきます。

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