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弁護士は「どこ」にいるのか——都道府県別分布データが示す、法的支援の地域格差

弁護士マップ編集部
9分で読める

48,541名の弁護士は、日本全国に均等に存在しない

日本国内に登録された弁護士の総数は48,541名(DB登録ベース)。一見すると、かなりの規模に感じられる。しかし、この数字をそのまま「全国の法的ニーズに対応できる規模」として受け取るのは早計だ。

なぜなら、弁護士の分布は都道府県によって極端に偏っているからだ。その偏りは「少し差がある」レベルではなく、数百倍という桁違いの格差として現れている。

法律トラブルを抱えたとき、あるいは将来のリスクに備えて弁護士を探したいと思ったとき、居住地がどの都道府県かによって、アクセスできる選択肢の数が根本的に異なる。この記事では、データに基づいてその実態を解剖し、依頼者の視点から何が問題で、どう向き合うべきかを考えていく。


東京一極集中:全国の約半数が1都市に集中

上位10都道府県のデータから見えるもの

まず、弁護士数の上位10都道府県を見てみる。

順位都道府県弁護士数
1東京都24,450名
2大阪府5,265名
3愛知県2,226名
4神奈川県1,851名
5福岡県1,517名
6北海道1,105名
7兵庫県1,065名
8埼玉県1,011名
9千葉県937名
10京都府897名

東京都の24,450名という数は、全体の48,541名に対して約50.4%にあたる。つまり日本の弁護士の約2人に1人は東京都に在籍していることになる。

2位の大阪府(5,265名)と比較しても、東京はその4.6倍以上。3位以下との差はさらに広がる。

この上位10都道府県の合計は40,324名、全体の83.1%を占める。残り37都道府県で16.9%を分け合っている計算になる。

「首都圏三県」の合算と東京の関係

神奈川県(1,851名)、埼玉県(1,011名)、千葉県(937名)の首都圏三県を合算すると3,799名。これは愛知県の1.7倍に相当するが、東京都の6分の1にも満たない。

地理的に東京と連続した大都市圏であっても、弁護士の絶対数という点では東京の「衛星」的な位置づけにとどまっている。


下位5県:1県あたり平均100名以下の現実

数字が示す過疎地域の実態

弁護士数の少ない5県のデータも確認する。

順位(下位)都道府県弁護士数
47位秋田県77名
46位島根県78名
45位高知県90名
44位徳島県95名
43位山形県101名

秋田県77名、島根県78名——。東京都の24,450名と並べると、その差は約317倍になる。

もちろん都道府県間には人口差がある。それを考慮した上でも、この数字は問題の深刻さを示している。秋田県の人口は約90万人(参考値)、弁護士77名とすれば、単純計算で弁護士1人が約1万1,700人をカバーしている計算になる。

一方、東京都は人口約1,400万人(参考値)に対して24,450名なので、弁護士1人あたり約573人。人口比で見ても、地方の弁護士不足は「人口比の差」だけでは説明しきれない規模で存在している。

「弁護士ゼロ地域」問題との連続性

弁護士数の少ない地域では、単に選択肢が少ないだけでなく、特定の専門領域において相談できる弁護士が実質的に存在しないケースも生じる。たとえば、企業法務・知的財産・国際取引・特定の医療訴訟分野などは、都市部に集中しやすい分野とされている。

離島や中山間地域では、最寄りの弁護士事務所まで数時間かかる状況も現実にある。法的トラブルはある日突然発生するものだが、相談できる弁護士へのアクセス距離が依頼の有無を左右することがある。


なぜこれほどの偏在が生まれるのか

経済・司法インフラの集積効果

弁護士数の偏在は、法曹の「選好」だけで説明できない。構造的な要因が複数重なっている。

第一に、経済活動の集積。企業が集まる場所に法人案件が集まり、法人案件が集まる場所に弁護士が集まる。東京・大阪・名古屋という三大都市圏は日本の経済活動の中枢であり、大規模な企業法務・M&A・訴訟案件が恒常的に発生する。弁護士にとって、経済的持続可能性の観点から都市部への集中は合理的な選択となる。

第二に、司法インフラの集中。裁判所・法テラス・弁護士会の各種研修機能・専門家コミュニティは都市部に厚く整備されている。弁護士のキャリア形成において、同業者とのネットワーク、専門分野の研鑽機会、大規模事務所での経験といった要素が重要な場合、都市部の優位性は大きい。

第三に、司法試験合格者の輩出構造。法科大学院の多くは大都市圏に存在し、合格者も都市部出身・在住者の比率が高い傾向にある。新人弁護士が地元での就職先を求めるとき、選択肢の絶対数が都市部に集中している。

近年の動向:地方回帰の兆しと限界

司法過疎の問題は以前から認識されており、日本弁護士連合会(日弁連)や法テラスによる地方配置支援策も存在する。一定数の弁護士が地方での開業・勤務を選択しており、「ゼロワン地域(弁護士ゼロまたは1名の地域)」の数は以前より改善しているとされる。

しかし、今回のデータが示す通り、偏在の構造的解消には至っていない。東京都1県だけで全体の半数を占める現状は、数十年単位での緩やかな変化の中にあると言える。


依頼者の視点:地域格差とどう向き合うか

「近くにいる弁護士」だけが選択肢ではない

地方在住の読者にとって、弁護士数が少ない地域に住んでいるという事実は、法的支援を諦める理由にはならない。いくつかの観点から整理しておきたい。

オンライン相談・リモート対応の普及。近年、弁護士との初回相談や継続的なやり取りがビデオ通話・メール等のリモート手段で行われるケースが増えている。特に書類のやり取りが中心になる相続・遺言・契約書レビュー等の案件では、物理的な距離の重要性が以前より低下している。弁護士を検索する際に、対応エリアや相談方法を確認することで、地方在住でも都市部の弁護士に依頼できるケースは少なくない。

案件の性質による使い分け。一方で、刑事事件の弁護や家庭裁判所への出頭が必要な案件、相手方との交渉が現地で発生するケースでは、地理的近接性が実務的に重要になる。案件の種類によって、「近くにいること」の重要度は異なる。

費用の地域差。弁護士費用の相場は案件の種類・難度・依頼先によって大きく異なるが、都市部と地方で傾向の違いが生じることがある。依頼前に複数の弁護士に見積もりを求めること、および費用相場をあらかじめ把握しておくことが、依頼者にとっての透明性確保につながる。

数が多ければ選びやすいとは限らない

東京都の24,450名という数は、選択肢の豊富さという意味でプラスに働く面がある。一方で、情報の非対称性という問題も生じる。

弁護士という職種は、依頼前に「質」を直接確認することが難しいサービスだ。医師や建築士と同様に、専門的な知識を持たない依頼者が事前に能力を評価するのは本質的に困難である。

そのため、「数が多い都市部だから安心」という単純な結論は成り立たない。弁護士を選ぶ際に参照できる客観的な情報として、弁護士会への懲戒請求・処分の記録は公開されている。懲戒処分データベースを確認することは、依頼者が利用できる数少ない公的情報のひとつだ。


分布データが示す「法的インフラ」の不均一性

弁護士の地域分布は、単なる職業選択の結果ではなく、その国の法的インフラの分布を反映している。

医療における「医師偏在」問題がしばしば政策課題として議論されるように、弁護士の地域偏在も、市民が法的権利を実質的に行使できるかどうかという民主主義的な問題と地続きだ。

法律問題が発生したとき、「弁護士に相談する」という行動が取れるかどうかは、居住地によって左右される現実がある。秋田県の77名と東京都の24,450名という数字の差は、その背後にある生活者の法的アクセス機会の差として理解できる。

データの「見えない部分」

今回の参考データは都道府県別・登録ベースの総数であり、いくつかの重要な情報は含まれていない点も指摘しておきたい。

  • 活動実態との乖離:登録地が東京であっても、実際には別地域で活動している弁護士や、実務をほぼ休眠している弁護士も含まれる可能性がある
  • 企業内弁護士の存在:いわゆる「インハウス弁護士」として企業に所属し、一般市民からの依頼を受けない弁護士も登録数に含まれる
  • 専門分野の分布:都道府県別の専門分野構成は今回のデータには含まれておらず、「地方にいる弁護士が扱える案件の種類」については別途の分析が必要だ

まとめ:数字を「自分の問題」として読む

48,541名という全国の弁護士総数は、日本社会の法的ニーズを支えるためのリソースだ。しかし、その分布は均一ではなく、東京都に約50%が集中し、下位5県では1県あたり100名以下という現実がある。

この格差は、経済・司法インフラ・キャリア構造が複合的に絡み合って生じており、短期的に解消する性質のものではない。

重要なのは、こうしたデータを「遠い問題」として眺めるのではなく、自分が法的支援を必要とする場面で何が起きるかを考えるための素材として使うことだ。

地方在住であれば、リモート相談の活用や案件に応じた地域選択を事前に検討しておく価値がある。都市部在住であれば、選択肢の多さに安心しつつも、依頼前の情報確認を怠らないことが重要だ。

弁護士の分布データは、日本社会における法的アクセスの現実を映す鏡だ。数字の背後にある構造を理解することが、いざというときの適切な行動につながる。

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