男女問題

養育費が払われないときの回収方法|強制執行までの流れ

弁護士マップ編集部
5分で読める

意外に知られていない事実から始めます。養育費の未払いに対する給与の差押えは、通常の借金なら手取りの4分の1までのところ、原則として2分の1まで認められています。さらに、一度差押えの手続きをすれば、将来の分(まだ支払期限が来ていない毎月の養育費)まで継続的に差し押さえられる特別な仕組みも用意されています。

つまり、法制度は「養育費は特別に強く保護すべきお金」という前提で作られています。それなのに未払いのまま諦めてしまう人が多いのは、「何から始めればいいか」「自分の場合はどの手が使えるのか」が分かりにくいからです。

実は、あなたが取れる手段は「養育費の取り決めがどんな書面で残っているか」でほぼ決まります。 まずそこから確認しましょう。

ステップ0:手元の書面を確認する

取り決めの形強制執行必要な準備
調停調書・審判書・判決(裁判所で決めた)すぐ可能履行勧告→強制執行へ
強制執行認諾文言付き公正証書すぐ可能強制執行へ
ただの合意書・念書(私文書)不可まず調停等で「債務名義」を取る
口約束のみ不可まず調停で取り決めから

ポイントは「債務名義」という言葉です。これは強制執行の根拠になる公的書面のことで、調停調書・審判書・判決・執行認諾文言付き公正証書がこれにあたります。私文書の合意書や口約束は、内容がどれだけ明確でも、それだけでは差押えできません。

書面がない・私文書しかない場合は、家庭裁判所に養育費請求調停(すでに取り決めがあるなら増額・支払いを求める調停)を申し立て、調停調書という債務名義を作るところからスタートします。遠回りに見えますが、これが最短ルートです。

ステップ1:まずは催促――ただし記録に残る形で

いきなり法的手続きに入る前に、支払いを求める連絡をします。このとき大事なのは「記録に残す」ことです。

  • LINEやメールで「○月分の養育費○円が未払いです。○日までにお支払いください」と具体的に書く
  • 応答がなければ内容証明郵便を送る(心理的プレッシャーと証拠化の両方の意味があります)

相手の状況(失業・病気など)で本当に払えないケースでは、減額調停を持ちかけられることもあります。感情的には受け入れがたくても、「減額してでも継続的に受け取る」ほうが結果的に総受取額が多くなる場合もあり、ここは冷静な損得の判断が必要です。

ステップ2:履行勧告・履行命令(調停・審判で決めた場合のみ)

家庭裁判所の調停や審判で養育費を決めた場合、履行勧告という制度が使えます。裁判所が相手に「約束を守りなさい」と勧告してくれる制度で、申し立ては無料、電話でも受け付けてもらえる手軽さが魅力です。強制力はありませんが、裁判所からの連絡というだけで支払いを再開する人も一定数います。

より強い履行命令という制度もあります(正当な理由なく従わないと過料の制裁があります)。ただし実務では、履行勧告で動かない相手には次の強制執行に進むのが一般的です。

なお、公正証書で決めた場合はこの制度は使えず、直接強制執行に進むことになります。

ステップ3:相手の財産を把握する

強制執行は「どの財産を差し押さえるか」を申立人が特定する必要があります。狙い目は次の順です。

  • 給与:勤務先が分かれば最有力。将来分まで継続的に差し押さえられる
  • 預貯金:銀行名・支店が分かれば差押え可能。ただし残高があるとは限らない
  • 不動産・車など:手続きが重く、養育費回収では次善の手段

「勤務先も口座も分からない」場合のために、法改正で強化された制度があります。

  • 財産開示手続:裁判所が相手を呼び出し、財産を陳述させる手続き。不出頭や虚偽陳述には刑事罰(懲役・罰金)が定められ、実効性が大きく高まりました
  • 第三者からの情報取得手続:裁判所を通じて、市町村や年金機構から勤務先情報を、銀行から預貯金口座情報を取得できる制度です。養育費の債権者は勤務先情報の取得が認められており、「逃げた相手の職場を突き止めて給与を差し押さえる」ことが制度上可能になっています

ステップ4:強制執行(差押え)

債務名義と相手の財産情報がそろったら、地方裁判所に債権差押命令を申し立てます。給与差押えの場合、裁判所から相手の勤務先に命令が届き、以後、会社が給与の一部を直接あなたに支払う流れになります。

  • 差押え範囲は原則、税金等を控除した給与の2分の1まで
  • 未払い分に加えて、将来の毎月の養育費もまとめて差押えの対象にできる(毎月手続きをやり直す必要がない)
  • 勤務先に未払いが知られるため、相手が差押え前に慌てて支払ってくることもあります

申立てには、債務名義の正本や送達証明書など複数の書類が必要で、書類集めが最初のハードルになります。

自分でやるか、弁護士に頼むか

履行勧告までは自分だけで十分対応できます。強制執行も、裁判所の窓口や書式を使って本人申立てをする人はいます。一方で、次の場合は弁護士への依頼を検討する価値があります。

  • 相手の財産・勤務先が不明で、情報取得手続から必要
  • 相手が転職を繰り返すなど、回収が長期戦になりそう
  • 減額調停を起こされて争いになっている

依頼費用と回収見込み額のバランスは必ず確認してください。未払い額が小さいうちに動くほうが、費用対効果も精神的負担も軽くなります。費用の考え方は費用相場に、地域の弁護士は弁護士を検索からたどれます。依頼前に口コミ一覧で利用者の声を見ておくのも一つの方法です。

養育費は子どものための、期限のある権利です(定期金債権は時効の問題もあります)。「そのうち払うだろう」で数年待つより、書面の確認という小さな一歩から始めてください。

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