中小企業・個人事業

売掛金を回収したい|催促から法的手段までの段階的な進め方

弁護士マップ編集部
5分で読める

入金予定日を1週間過ぎたとき、多くの事業者はまだ動きません。「経理のミスだろう」「催促してこの先の取引に響いたら困る」。1ヶ月過ぎて、ようやく遠慮がちなメールを1通。返事は「確認します」。そして3ヶ月——この間に、回収の難易度は静かに上がり続けています。

売掛金の回収で最も多い失敗は、手段の選択ミスではなく「動き出しの遅さ」です。支払いが遅れる会社は、あなた以外にも支払いを遅らせていることが多く、資金繰りが悪化していく取引先からの回収は早い者勝ちの側面があります。この記事では、角を立てない事務確認から強制執行まで、段階を踏んだ進め方を整理します。

回収は5つの段階で考える

いきなり法的手段に飛ぶ必要はありませんし、逆に催促メールを何ヶ月も繰り返すのも時間の浪費です。次の段階を、相手の反応を見ながら順に(場合によっては飛ばして)進めます。

第1段階:事務レベルの確認。請求書は届いているか、記載(振込先・金額・締め日)に不備はないか、先方の支払サイトの認識と食い違っていないかを担当者に確認します。実際、単純な事務ミスで止まっているだけのケースもあります。この段階の連絡は関係を壊しません。

第2段階:記録に残る催促。電話だけで済ませず、メールか書面で「○月○日までにお支払いください」と期限を切って催促します。ここからは「あとで証拠になる形」を意識してください。相手が「来月まとめて払う」等と言ったら、その内容をメールで復唱して残します。支払いを認める返信は、後の裁判で債務の存在を裏付ける証拠になります。

第3段階:内容証明郵便。誰が・いつ・どんな内容の郵便を送ったかを郵便局が証明する制度です。法的な強制力はありませんが、(1)本気度が伝わり任意の支払いにつながることがある、(2)催告として時効の完成を6ヶ月猶予させる効果がある、という実益があります。弁護士名義で送ると心理的効果が大きくなる一方、相手との関係が「紛争モード」に切り替わることは覚悟が必要です。

第4段階:法的手続き。相手が無視を続ける、または支払う意思が見えない場合はここに進みます(手段の比較は後述)。

第5段階:強制執行。判決や支払督促を得ても、相手が払わなければ、預金・売掛債権・不動産などを差し押さえる強制執行が必要です。「勝訴=入金」ではないことは、最初から織り込んでおくべき現実です。

法的手段の使い分け

手続き向いているケース特徴
支払督促相手が争ってこない見込みが高い書類審査のみで簡易裁判所から督促が出る。相手が異議を出すと通常訴訟に移行
少額訴訟60万円以下の金銭請求原則1回の期日で判決。本人でも進めやすい。相手の申出で通常訴訟に移行することがある
民事調停関係を保ちつつ分割払い等で合意したい調停委員を挟んだ話し合い。成立すれば調書に強制執行力がある
通常訴訟金額が大きい、事実関係に争いがある時間と費用がかかるが、争いのある事案では本丸

ポイントは「相手が争ってくるか」の見立てです。納品物の品質にクレームをつけているなど、相手に言い分がある場合、支払督促を出しても異議で通常訴訟に移行するだけなので、最初から訴訟や交渉を選んだほうが早いことがあります。

時効を忘れない

売掛金などの債権は、原則として支払期日から5年で時効により消滅します(民法改正前の取引には別の期間が適用される場合があります)。「そのうち払うと言っているから」と待ち続けているうちに時効が近づくのが危険なパターンです。内容証明による催告での6ヶ月の完成猶予、裁判上の請求、相手による債務の承認(一部弁済や支払猶予の依頼など)で時効の進行は止められます。長期化している債権があるなら、まず時効までの残り時間を確認してください。

費用倒れを避ける判断基準

正直に言えば、すべての売掛金が回収に値するわけではありません。判断の軸は3つです。

  • 金額:数万円の債権に弁護士費用をかければ赤字です。少額なら少額訴訟や支払督促を自分で使う選択肢が現実的です
  • 相手の資力:倒産寸前の相手に判決を取っても回収できません。登記情報、事務所の様子、他の取引先の噂などから資力を見立てます
  • 証拠:契約書・発注書・納品記録・請求書・やり取りのメール。証拠が揃っているほど、弁護士に依頼したときの見通しも立てやすくなります

弁護士に依頼するかの分かれ目は、おおむね「金額が大きい」「相手に言い分があって争いになりそう」「相手の対応が不誠実で心理的な負担が大きい」のいずれかです。着手金・成功報酬の考え方は費用相場を参考にしてください。債権回収の取扱い実績がある弁護士は弁護士を検索から探せます。

回収と同じくらい大事な「次の予防」

一度未払いを経験したら、取引条件の見直しをおすすめします。新規取引先の与信確認、前金・着手金の設定、支払サイトの短縮、継続取引での取引基本契約書の締結、遅延損害金条項——これらは次の未払いの被害を確実に小さくします。回収は事後の治療、契約は事前の予防です。両方が揃って初めて、売掛金のリスクはコントロールできます。

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