中小企業・個人事業

取引先が倒産したら|債権回収でやるべきこと・やってはいけないこと

弁護士マップ編集部
5分で読める

取引先の倒産を知ったとき、最初に頭に浮かぶ行動が、実は一番危険です——「納品した商品がまだ先方の倉庫にある。回収されてしまう前に、引き揚げに行こう」。

気持ちは分かりますが、これは原則としてやってはいけません。日本の法律では、権利があっても実力行使で取り戻すこと(自力救済)は禁止されています。相手の同意なく商品を持ち出せば、窃盗などの犯罪が成立し得るうえ、破産管財人から返還を求められ、立場をかえって悪くします。倒産の場面は「早く動いた者が得をする」のと「焦って動いた者が損をする」のが紙一重で同居している場面です。この記事では、その線引きを整理します。

やってはいけないこと

  • 商品・機材の無断引き揚げ:前述のとおり自力救済にあたります。所有権留保特約(代金完済まで所有権は売主に残る特約)がある場合でも、引き揚げには相手方の同意を得るなど適切な手順が必要です
  • 担当者と個別の「うちにだけ先に払う」約束を取り付ける:破産手続き等では、特定の債権者だけが優遇される弁済(偏頗弁済)は、後から破産管財人によって否認され、受け取ったお金の返還を求められる可能性があります
  • 何もしないで待つ:債権届出には期限があります。通知や公告を放置すると、配当を受ける手続きから漏れることがあります

「倒産」には種類がある——まず相手がどれかを確認

倒産と一口に言っても、法的な扱いは手続きによって異なります。

手続きざっくりした内容債権者としての関わり
破産事業をやめて財産を清算破産管財人に債権届出をし、配当を待つ
特別清算主に清算中の株式会社の清算型手続き協定や個別和解への対応
民事再生事業を続けながら債務を圧縮して再建債権届出のうえ、再生計画への賛否を投票
会社更生主に大企業向けの再建手続き更生手続きへの債権届出
私的整理裁判所を通さない任意の調整個別の交渉・合意

破産(清算型)なら今後の取引はなくなりますが、民事再生(再建型)なら相手は事業を続けるため、「債権者」と「今後の取引先」の二つの顔で判断することになります。

直後にやるべきこと

1. 情報の確認。「倒産らしい」という噂だけで動かないこと。裁判所からの通知、代理人弁護士からの受任通知、官報公告などで、手続きの種類・事件番号・債権届出期限・連絡先を確認します。

2. 自社の債権と債務の棚卸し。その取引先に対する売掛金・貸付金など(債権)と、逆に自社が支払うべき買掛金など(債務)を一覧にします。契約書・注文書・納品書・請求書を揃え、債権額の根拠を示せる状態にします。

3. 相殺の検討。自社がその取引先に債務も負っている場合、対等額での相殺により、事実上の優先回収と同じ効果が得られることがあります。倒産手続きにおける相殺には要件と制限(禁止される場合)があるため、金額が大きいなら弁護士に確認してから行うのが安全です。

4. 担保・保証・特約の確認。保証人はいるか、担保は取っているか、契約書に所有権留保特約はあるか。ここで「契約時にどれだけ手当てしていたか」が回収額の差になって表れます。

5. 債権届出。期限内に、証拠資料を添えて届け出ます。書式は手続きごとに決まっており、通知に同封されるのが通常です。

6. 継続中の契約・注文の整理。納品前の注文をどうするか、リース物件や預け在庫はどうなるかを、管財人や代理人に確認します。判断がつかないまま追加納品するのは避けるべきです。

回収見込みについての正直な話

厳しい現実ですが、破産手続きで無担保の一般債権者に戻ってくる金額は、限定的であることが多いのが実情です。だからこそ、倒産後の回収努力と同じかそれ以上に、(1)相殺・担保・所有権留保など「事前の仕込み」と、(2)倒産の兆候(支払遅延の常態化、決済条件変更の申し出、担当者の退職続き、事務所の縮小など)を察知して与信を絞る判断が重要になります。

自社の連鎖を防ぐ

大口取引先の倒産は、自社の資金繰りを直撃します。取引先の倒産等に備える公的な制度として、中小企業向けの共済制度(経営セーフティ共済)や、信用保証のセーフティネット保証といった仕組みが用意されています。該当し得る場合は、金融機関・商工会議所・自治体の窓口に早めに相談してください。あわせて、特定の取引先への売上依存度を下げることが、長期的には最大の防御になります。

弁護士に相談すべきライン

債権額が小さく、届出をして配当を待つだけなら、自力で対応できることも多いです。一方、(1)債権額が大きい、(2)相殺や所有権留保など判断の難しい手段を使いたい、(3)自社の資金繰りに影響が出る、(4)相手の再建手続きで債権者として意見を出したい——といった場合は、倒産・債権回収分野の取扱い実績がある弁護士への相談が有効です。弁護士を検索で分野から探せます。初動の相談だけならスポットでも受けてもらえます。相談費用の考え方は費用相場を参照してください。

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