手続きの知識

裁判所から訴状が届いたら|放置が最悪の選択である理由

弁護士マップ編集部
5分で読める

郵便配達員から手渡しで受け取った分厚い封筒。差出人は裁判所。中には「訴状」と題された書面と、「口頭弁論期日呼出状」、そして「答弁書」という空欄の用紙——。

怒り、混乱、恐怖。訴えられた人が最初に感じる感情はさまざまですが、その後の行動は大きく2つに分かれます。すぐに中身を読み込んで対応を始める人と、「身に覚えがない」「考えたくない」と封筒ごと引き出しにしまい込む人です。

そして民事訴訟という制度は、後者に対して容赦がありません。この記事で伝えたいことはただひとつ、訴状の放置は、あらゆる選択肢の中で最悪だということです。

放置すると何が起きるのか:擬制自白という仕組み

民事訴訟には「擬制自白」というルールがあります。被告が答弁書も出さず期日にも出頭しない場合、裁判所は原告の主張する事実をすべて認めたものとみなすことができるのです。証拠調べも反論の機会もなく、原告の言い分どおりの判決——たとえば「被告は原告に金300万円を支払え」——が出て、確定すれば給与や預金の差押えが可能な状態になります。

「事実と違うのだから、裁判所が調べて分かってくれるはず」という期待は通用しません。民事訴訟は、当事者が主張し争った点だけを審理する仕組みです。あなたが争わなければ、争いがないものとして進みます。請求内容がどれほど不当でも、沈黙はそれを承認する行為として扱われるのです。

届いた日から始まるタイムライン

訴状を受け取ってからの時間の流れを整理します。

受領直後:まず封筒の中身を全部確認します。訴状(相手の言い分)、証拠の写し、期日呼出状(第1回口頭弁論の日時・場所)、答弁書の書式と提出期限の案内が入っているはずです。第1回期日は、通常、送達から1か月程度先に指定されています。

〜答弁書提出期限まで:呼出状に答弁書の提出期限が記載されています(多くは期日の1週間ほど前)。ここまでに答弁書を裁判所と原告側に提出するのが第一の目標です。

第1回口頭弁論期日:実は、被告については第1回期日に限り、答弁書を提出しておけば欠席しても、答弁書の内容を陳述したものとして扱われる運用があります(擬制陳述)。仕事でどうしても行けない場合でも、答弁書さえ出しておけば「全面敗訴」は避けられるのです。逆にいえば、答弁書提出がいかに決定的かが分かります。

第2回以降:争点の整理と証拠の提出を重ね、必要なら証人尋問を経て、判決または和解に至ります。

最初の答弁書は「完璧」でなくていい

答弁書と聞くと、法律的な反論を完璧に書かなければならないように思えますが、そうではありません。時間がない場合の第1回向け答弁書は、実務上、次の程度の記載でも意味を持ちます。

  • 請求の趣旨に対する答弁:「原告の請求を棄却するとの判決を求める」
  • 請求の原因に対する認否:「追って主張する」あるいは分かる範囲での認否
  • 分割払いを希望する場合はその旨

重要なのは、争う意思を裁判所に示し、擬制自白を防ぐことです。詳細な反論は、弁護士に相談したうえで次回以降に出すことができます。

ただし、認否は不用意に書かないでください。「借りたのは事実だが、もう返した」つもりで「借りた事実は認める」とだけ書くと、後の主張の組み立てに影響します。自信がなければ「追って認否する」に留め、早急に相談へ動くのが安全です。

「身に覚えがない訴状」への対処

本物の訴状は「特別送達」という手渡しの郵便で届き、受領のサインを求められます。普通郵便やSMSで届く「訴訟最終通告」の類いは詐欺を疑うべきですが、特別送達で届いた訴状はまず本物です。

身に覚えがなくても、本物である以上は放置できません。考えられる原因——債権が譲渡されて知らない会社が原告になっている、保証人になった契約が絡んでいる、同姓同名の誤り、あるいは消滅時効が完成している古い債権の請求——のどれであっても、答弁書で争わなければ判決は出てしまいます。とりわけ古い債権の場合、答弁書で消滅時効を援用することで請求を退けられる可能性があり、これは黙っていても裁判所が指摘してくれる事柄ではありません。

弁護士に相談する目安と費用の考え方

すべての訴訟に弁護士が必須なわけではありません。請求額が小さく、事実関係に争いがなく、分割払いの和解を望むだけなら、本人で対応する人も少なくありません。

一方、次のいずれかに当てはまるなら、答弁書を出す前の段階で弁護士への相談を検討すべきです。

  • 請求額が大きい(数十万円を超えるなら相談の費用対効果は十分あります)
  • 事実関係を争いたい、または身に覚えがない
  • 契約書や証拠の評価が絡む
  • 相手に弁護士が付いている

相談のときは、訴状一式・呼出状・関係する契約書やメールを持参してください。期日が迫っているほど選択肢は狭くなるので、動くのは早いほどよいといえます。地域と分野から弁護士を検索で相談先を探せます。着手金・報酬の一般的な考え方は費用相場に、実際に依頼した人の声は口コミ一覧にまとまっています。

訴えられることは、それ自体では負けではありません。民事訴訟は、双方に言い分を出させて初めて機能する制度です。その舞台に上がる権利を、沈黙によって自分から手放さないでください。

この記事をシェア

弁護士を探してみる

全国48,000名以上の弁護士情報・口コミ・懲戒処分歴を無料で確認できます。