ネットトラブル

SNSでなりすまし被害に遭ったら|アカウント削除と法的対応

弁護士マップ編集部
5分で読める

意外に思われるかもしれませんが、日本には「なりすまし」そのものを罰する法律がありません。

他人の名前と顔写真でアカウントを作る行為は、それ自体を取り締まる規定がないのです。では泣き寝入りかというと、そうではありません。なりすましアカウントが「何をしているか」によって、既存の法律で対応できる場合が多くあります。名誉毀損、肖像権侵害、プライバシー侵害、詐欺——なりすましは、たいてい何か別の違法行為とセットだからです。

この構造を理解すると、対応の優先順位がはっきりします。順に見ていきましょう。

まず被害の型を見分ける

なりすましには、対応がまったく異なる3つの型があります。自分のケースがどれか、最初に見極めてください。

型A:評判毀損型 — あなたの名前と写真で、暴言・差別発言・恥ずかしい投稿をする。周囲に「本人が言っている」と誤解させ、社会的評価を下げるタイプ。

型B:詐欺・詐取型 — あなたになりすまして友人・フォロワーにDMを送り、金銭やギフトカード、個人情報を要求するタイプ。被害者はあなた本人だけでなく、騙されたフォロワーにも広がります。

型C:写真流用型 — あなたの写真だけを使い、別人格として出会い系や投資勧誘のアカウントを運用するタイプ。名前は使われないこともあります。

型Bは金銭被害の防止が最優先、型Aは削除と評判回復が中心、型Cは肖像権を軸にした削除請求が中心になります。

最初の一手:各SNSの「なりすまし通報」

主要なSNS(X、Instagram、Facebook、TikTokなど)には、利用規約上なりすましを禁止する条項と、専用の通報窓口があります。ここが最も速く、無料で、成功率も悪くないルートです。

通報を通しやすくするための準備は次のとおりです。

  • なりすましアカウントのURL・ユーザー名・スクリーンショット(プロフィールと問題投稿の両方)
  • 本人確認書類(運転免許証など。プラットフォームによっては提出を求められます)
  • あなた自身の本物のアカウント情報
  • 流用された写真の元データ(自分が撮影・投稿したことを示せるもの)

注意点として、通報は「規約違反の指摘」なので、感情ではなく該当性を示すことが重要です。「このアカウントは私の氏名と写真を無断で使用し、私本人であると誤認させています」という形で、なりすましの根拠を明示してください。

また、この段階でも証拠のスクリーンショット確保を通報より先に行ってください。通報が通ってアカウントが消えると、後の法的手続きに使う証拠も消えます。

通報で消えないとき:法的な削除請求へ

プラットフォームが動かない場合、権利侵害を理由とした法的な削除請求(送信防止措置依頼や裁判所の仮処分)に進みます。このとき「どの権利の侵害を主張するか」が腕の見せどころになります。

  • 虚偽の投稿で評判を下げられている → 名誉権侵害
  • 顔写真を無断使用されている → 肖像権侵害
  • 非公開の個人情報を書かれている → プライバシー侵害
  • 氏名を勝手に使われている → 氏名権の侵害として構成できる場合があります

なりすましそのものを裁く法律がない分、こうした既存の権利に引きつけて主張を組み立てる必要があり、ここは法的な構成力が問われる場面です。ネット案件の取扱いが多い弁護士に依頼する実益が大きいポイントと言えます。弁護士を検索から地域とジャンルで探せます。

型B(詐欺型)の場合:警察への相談をためらわない

フォロワーや知人に金銭被害が出ている、または出そうな場合は、民事の削除請求と並行して警察に相談してください。詐欺は明確な犯罪であり、被害額や手口によっては捜査対象になります。相談窓口は最寄りの警察署のほか、警察相談専用電話(#9110)や各都道府県警のサイバー犯罪相談窓口があります。

同時に、自分の本物のアカウントで「なりすましが発生しています。DMでの金銭要求は私ではありません」と周知することも、二次被害の防止として有効です。このとき、なりすましアカウントへのリンクを張るのは拡散に加担しかねないので、名指しは最小限にとどめるのが無難です。

投稿者を特定して責任を追及したい場合

削除だけでなく、なりすましの犯人に慰謝料を請求したい場合は、発信者情報開示請求という手続きで運営者・プロバイダから投稿者の情報をたどることになります。アクセス記録の保存期間には限りがあると言われているため、特定を視野に入れるなら早めの着手が必要です。特定後は、示談交渉や損害賠償請求訴訟に進みます。

正直なところ、なりすましの動機は「知人による嫌がらせ」であるケースが実務上よく指摘されます。特定の結果、身近な人物が判明する可能性も想定しておいてください。

弁護士に依頼するかどうかの整理

依頼を急がなくてよいのは、次のような場合です。

  • 通報でアカウントが削除され、実害も再発もない
  • 写真流用のみで拡散規模が小さく、通報で対応が進んでいる

一方、次のいずれかに当てはまるなら、相談を前倒しする価値があります。

  • 通報が通らない、または消してもすぐ復活する
  • 金銭被害・業務上の実害(取引先からの問い合わせ等)が発生している
  • 犯人を特定して賠償や再発防止を求めたい
  • 対応の全体像を設計してほしい

費用は削除のみか、特定・賠償請求まで進むかで大きく変わります。目安の考え方は費用相場にまとめています。依頼先選びでは口コミ一覧の実体験も参考になるはずです。

まとめ:なりすましは「複合被害」として扱う

なりすましを単独の被害と捉えると、「罰する法律がない」という壁にぶつかって途方に暮れます。しかし実際の被害は、名誉・肖像・プライバシー・財産への攻撃の複合体です。分解すれば、それぞれに対応する手段があります。通報で消す、法的に消す、犯人を特定する、周囲を守る——自分のケースで必要な手を、この順で検討してみてください。

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