借金・債務整理

奨学金が返せないときの選択肢|放置が一番危険な理由

弁護士マップ編集部
6分で読める

奨学金には、他の借金にはない「二つの特殊事情」がある

奨学金の返還に行き詰まった人の相談には、共通する背景がある。ひとつは、本人が奨学金を「借金」だと認識しないまま社会人になっていること。契約したのは18歳、実感のないまま数百万円の債務を背負い、返還が始まって初めて重さに気づく。

もうひとつは、保証人が親や親戚であることが多いという事情だ。消費者金融の借金なら滞納しても困るのは自分だが、人的保証型の奨学金は、滞納が続くと父母や親戚に請求が及ぶ。「家族に迷惑をかけたくない」という思いが相談を遅らせ、結果として一番家族に迷惑がかかる形で表面化する——この逆説が、奨学金問題の典型パターンといえる。

だからこそ、奨学金は「苦しくなってから考える」のでは遅い。この記事では、放置した場合に何が起きるかを先に示し、そのうえで軽い順に選択肢を並べる。

放置するとどうなるか:進行の流れ

日本学生支援機構(JASSO)の奨学金を滞納した場合、おおむね次の順で事態が進むとされる。

  • 延滞金の発生:滞納した割賦金に対して延滞金が加算され、返す総額が増えていく
  • 本人・連帯保証人・保証人への督促:文書や電話での督促が、本人だけでなく保証人にも届くようになる
  • 個人信用情報機関への登録:一定期間の延滞が続くと事故情報として登録され、クレジットカードや住宅ローンの審査に影響する
  • 一括請求(期限の利益の喪失):分割で返す権利を失い、残額全部+延滞金を一括で請求される
  • 裁判・強制執行:支払督促や訴訟を経て、給与や預金の差押えに至ることがある

重要なのは、この進行の途中で使える救済制度が、延滞が深くなるほど使いにくくなることだ。減額返還制度は延滞していると原則利用できず、まず延滞を解消する必要があるとされる。「苦しいから放置」は、楽になる手段を自ら封じる行為になってしまう。

ステップ1:JASSOの救済制度を確認する(債務整理の前に)

返還が苦しいとき、いきなり債務整理を考える必要はない。JASSOには返還者向けの救済制度があり、まずこちらの利用可否を確認するのが筋だ。

  • 減額返還制度:一定の収入基準を満たす場合に、毎月の返還額を減らし、そのぶん返還期間を延ばす制度。返す総額は原則変わらないが、月々の負担を抑えられる
  • 返還期限猶予制度:失業・低収入・傷病・災害などの事情がある場合に、返還を一定期間先送りできる制度。適用期間中は延滞扱いにならない
  • 返還免除:本人が死亡した場合や、精神・身体の障害により返還できなくなった場合に、返還の全部または一部が免除されうる制度

いずれも申請と審査が必要で、収入基準や適用年数の上限など細かい条件がある。条件や必要書類は変更されることがあるため、最新の内容はJASSOの公式情報で確認してほしい。ポイントは、これらが「申請しなければ適用されない」制度だということ。苦しさを放置せず、基準に当てはまるうちに申請することがすべてに優先する。

ステップ2:救済制度で足りないなら、債務整理を検討する

「猶予の年数上限を使い切った」「奨学金以外にもカードローンがあり、月々の減額では追いつかない」——そうなると、法的な債務整理の出番になる。奨学金も法律上は貸金と同じく、任意整理・個人再生・自己破産の対象になる。

ただし、奨学金ならではの注意点がある。

  • 任意整理の効果は薄いことが多い:任意整理の主眼は利息カットだが、奨学金はもともと低利のため、切れる利息がほとんどない。奨学金以外の高利の借金だけを任意整理し、奨学金は猶予制度でしのぐ、という組み合わせが検討されることが多い
  • 個人再生・自己破産では保証人に請求が行く:ここが最大の分かれ目だ(次項で詳述)
  • 自己破産しても免責される:奨学金は税金と違い、免責の対象になる通常の債務だ。「奨学金は破産しても消えない」という俗説は誤り

分かれ目は「機関保証か、人的保証か」

自分の奨学金がどちらの保証型かで、債務整理の影響範囲がまったく違う。貸与時の書類(返還誓約書など)やJASSOのスカラネット・パーソナルで確認できる。

  • 機関保証:保証機関が保証料を取って保証している型。本人が破産などをすると保証機関が代位弁済するが、親や親戚に請求は行かない。債務整理の決断は比較的しやすい
  • 人的保証:連帯保証人(多くは父母)と保証人(多くは4親等内の親族)がついている型。本人が免責されても保証人の義務は消えず、残額の請求が保証人に向かう。本人だけの判断で破産すると、親が数百万円を背負う事態になりうる

人的保証型で本人の債務整理が避けられない場合、保証人と情報を共有したうえで、保証人側の資力や年齢も踏まえて全体の方針を立てる必要がある。場合によっては保証人側の債務整理も同時に設計することになる。この調整は家族関係にも関わるデリケートな作業で、奨学金や債務整理の取扱いが多い弁護士に間に入ってもらう価値が大きい場面だ。

相談前に手元にそろえておくもの

  • 奨学金の貸与総額・残額・月々の返還額がわかる書類(スカラネット・パーソナルの画面でも可)
  • 保証型(機関保証/人的保証)の確認
  • 奨学金以外の借入の一覧(借入先・残高・金利)
  • 直近の収入がわかるもの(給与明細・源泉徴収票など)
  • 猶予・減額返還の利用歴があればその記録

この5点があれば、初回相談で「救済制度で足りるのか、債務整理まで必要か」の当たりがつけられる。弁護士は弁護士を検索から探せる。費用が心配な場合は、収入基準を満たせば法テラスの民事法律扶助(費用の立替制度)を使える可能性があるし、一般的な費用感は費用相場で確認できる。

最後に:奨学金問題は「早いほど選択肢が多い」の典型

まとめると、対応の順番はこうなる。(1) 滞納する前に猶予・減額返還を申請する → (2) 制度で足りなければ、保証型を確認したうえで債務整理を検討する → (3) どの段階でも、放置だけはしない。 延滞金・信用情報・保証人請求という奨学金の三大リスクは、いずれも「時間の経過」で悪化する。逆に言えば、今日動けば今日の選択肢が全部使える。それが放置をすすめない、いちばん現実的な理由だ。

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