借金・債務整理

個人再生なら家を残せる?住宅ローン特則の仕組み

弁護士マップ編集部
6分で読める

「住宅ローンはそのまま払い、他の借金だけ減らす」制度が存在する

借金の整理を考えたとき、多くの人が最後まで踏み切れない理由は家だ。自己破産をすれば持ち家は原則として処分される。家族の生活の場を失うくらいなら、と無理な返済を続けてしまう。

しかし、あまり知られていない事実がある。法律には「住宅ローンだけは今までどおり(または条件を変更して)払い続け、それ以外の借金を大幅に圧縮する」という制度が用意されている。個人再生の住宅資金特別条項、通称・住宅ローン特則だ。

たとえばカードローンや消費者金融の借入が膨らんで住宅ローンと合わせた返済が限界を超えてしまった人が、家を手放さずに再建できる可能性がある。この記事では、この制度の仕組み・条件・落とし穴を順に解説する。

そもそも個人再生とは:借金を法律の基準で圧縮する手続き

個人再生は、裁判所を通じて借金を大幅に減額し、原則3年(最長5年)で分割返済する手続きだ。任意整理と違って元本自体が減り、自己破産と違って財産の処分や資格制限がない。

減額後にいくら払うか(最低弁済額)は法律で基準が決まっている。

住宅ローンを除く借金総額最低弁済額
100万円未満総額全部
100万円以上500万円以下100万円
500万円超1,500万円以下総額の5分の1
1,500万円超3,000万円以下300万円
3,000万円超5,000万円以下総額の10分の1

たとえば住宅ローン以外の借金が600万円なら、最低弁済額は120万円。これを3年で分割すると月々約3.3万円だ。ただし、所有財産の総額が最低弁済額を上回る場合は財産額まで弁済額が引き上がる(清算価値保障)、給与所得者等再生では可処分所得の2年分という別基準もかかる、といった調整があるため、実際の金額は個別に計算が必要になる。

住宅ローン特則の仕組み:住宅ローンを「別枠」にする

通常、個人再生ではすべての債権者を平等に扱う必要がある。住宅ローンだけ満額払い、カード会社は減額、という差別は本来許されない。この原則の例外として設けられたのが住宅資金特別条項だ。

この条項を使うと、住宅ローンは減額の対象から外れ、従来どおり(または返済期間の延長などのリスケジュールをして)払い続けることになる。その代わり、抵当権は実行されず、家に住み続けられる。つまり「住宅ローンは1円も減らない」が「家は守られる」という取引だ。

滞納がすでに始まっていて、保証会社が代位弁済してしまった場合でも、代位弁済から6か月以内に再生手続開始の申立てをすれば、巻き戻し(代位弁済がなかったことになる扱い)が認められている。滞納後でも間に合う可能性があるという点は、あきらめる前に知っておいてほしい。

利用条件チェックリスト

住宅ローン特則には細かい要件がある。主なものを挙げる。

  • 本人が所有し、本人が居住する住宅であること(別荘や投資用マンションは不可。店舗兼住宅は床面積の2分の1以上が居住用であることが必要)
  • 住宅ローンが「住宅の建設・購入・改良」のための借入であること(不動産担保ローンやおまとめローンを住宅に担保設定したものは対象外になりうる)
  • 住宅に住宅ローン関係以外の抵当権がついていないこと(事業資金の担保などが後順位についていると使えない)
  • 個人再生自体の要件を満たすこと:住宅ローンを除く借金が5,000万円以下、継続的な収入の見込みがある、など

このほか、税金の滞納で自宅が差し押さえられている場合など、個別事情で使えないケースもある。登記簿謄本(全部事項証明書)を取って抵当権の状況を確認するのが検討の第一歩だ。

向かないケースも正直に書いておく

住宅ローン特則つき個人再生は強力な制度だが、次のような場合は慎重な検討が要る。

  • 住宅ローン自体の返済が収入に対して重すぎる場合:特則は住宅ローンを減らさない。圧縮後の他の借金+住宅ローンを払い続けられる収入がなければ、計画は認可されないか、認可されても破綻する。この場合、家を売却して負債を整理するほうが生活再建に近いこともある
  • 家の価値がローン残高を大きく上回る場合:清算価値が上がり、弁済額が想定より増えることがある
  • 借金総額が少ない場合:住宅ローン以外の借金が100万円台なら、個人再生をしても大きくは減らない。任意整理で足りる可能性がある
  • 収入が不安定な場合:再生計画は3〜5年の継続返済が前提。収入の見込みを裁判所に示せないと認可されにくい

「家を残す」ことが常に最善とは限らない。売却してもローンが残るのか(オーバーローン)、売れば完済して手元にお金が残るのかで、最適解は変わる。不動産の査定と家計の収支を並べて判断する作業になるため、この段階から弁護士に入ってもらう価値は大きい。

手続きの流れと現実的なスケジュール感

  • 弁護士に相談・依頼(受任通知で住宅ローン以外の取り立て・返済が停止)
  • 裁判所に再生手続開始の申立て
  • 債権額の確定、再生計画案の作成・提出
  • 債権者の決議または意見聴取を経て、裁判所が認可
  • 認可確定後、計画に沿って3〜5年の返済

申立てから認可まで半年前後かかるのが一般的とされる。書類が多く、家計収支表の作成や履行テスト(返済予定額の積立)を求められる裁判所もあるため、個人再生は債務整理の中でも書類負担が重い手続きだ。個人再生の取扱いが多い弁護士に依頼するのが現実的で、弁護士を検索では分野を絞って探せる。費用の考え方は費用相場も参考にしてほしい。

まとめ:家を守る道はあるが、設計図が要る

住宅ローン特則は「家だけは守りたい」という人のために作られた制度であり、条件を満たせば、家を残したまま他の借金を法律の基準で圧縮できる。一方で、住宅ローン自体は減らないこと、要件が細かいこと、収入の裏付けが必要なことから、使えるかどうかの見極めには登記・家計・ローン契約の精査が欠かせない。

滞納が進むほど選択肢は狭まる。特に保証会社の代位弁済から6か月という期限があるため、「ローンを2〜3か月滞納している」段階の人は、早めに相談へ動いてほしい。

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