ネットトラブル

子どものSNSトラブル|親が弁護士に相談する前に整理すること

弁護士マップ編集部
7分で読める

夜、子どもの部屋から泣き声が聞こえる。問い詰めてようやくスマホを見せてもらったら、グループチャットに悪口が並んでいた。あるいは逆に、学校から「お宅のお子さんが友達の写真を勝手に拡散したようです」と電話がかかってきた──。

子どものSNSトラブルで親が最初に直面するのは、「何が起きているのか、親には全体像が見えない」という壁です。大人の紛争と違って、当事者である子ども自身が事実を全部話してくれるとは限りません。怒られるのが怖い、友達を売りたくない、そもそも自分でも何が問題か分かっていない。そんな状態からスタートします。

だからこそ、いきなり弁護士事務所に駆け込む前に、親が家庭でやっておくべき「整理」があります。これをやっておくかどうかで、相談の質も、その後の解決スピードも大きく変わります。

最初に確認すべきは「子どもの立ち位置」

子どものSNSトラブルは、大きく3つのパターンに分かれます。どれに当たるかで、親が取るべき初動がまったく違います。

  • 子どもが被害者のケース:悪口や仲間外れ、なりすまし、写真の無断掲載、脅されて画像を送らされた、課金やゲームアイテムをだまし取られた、など
  • 子どもが加害者側のケース:友達の悪口を投稿した、他人の写真や動画を拡散した、グループで特定の子を攻撃していた、など
  • 両方が混ざっているケース:やられたからやり返した、最初はふざけ合いだったのがエスカレートした、など。実際にはこのパターンがかなり多いと言われます

親としては「うちの子は被害者だ」と思いたくなりますが、話を聞いていくと双方向だったと分かることは珍しくありません。この見立てを間違えたまま学校や相手の親に強く出てしまうと、後で立場が悪くなることがあります。最初の段階では、決めつけずに事実だけを集めることが大切です。

証拠保全──消される前に、削除する前に

SNSトラブルの証拠は、驚くほど簡単に消えます。相手が投稿を削除する、グループから退会させられて履歴が見えなくなる、時間制限つきの投稿が自動で消える。そして意外な落とし穴が、子ども自身が「怖いから」「見たくないから」と自分で消してしまうことです。

削除や退会などの操作をする前に、次のものを残してください。

  • 問題の投稿・メッセージのスクリーンショット(相手のアカウント名・日時が写り込む形で)
  • 投稿のURL(スクリーンショットだけでは投稿の特定が難しい場合があります)
  • 相手のアカウントのプロフィール画面
  • やり取りの前後の流れが分かる範囲の画面(問題の一言だけ切り取ると、文脈を争われることがあります)

ひとつ注意があります。トラブルの内容が「裸の画像を送らされた」といった性的なものである場合、その画像自体を親のスマホに転送して保存する行為は、児童ポルノに関する法律との関係で慎重になるべき場面があります。この種のケースでは、画像そのものの複製は避け、URLやアカウント情報の記録にとどめて、早めに警察や弁護士に相談する方が安全です。

家庭でつくる「状況整理メモ」

弁護士でも学校でも警察でも、相談先がどこであれ、次の項目をA4一枚程度にまとめておくと話が早く進みます。

  • 時系列:いつ頃から始まり、どんな出来事がどの順番で起きたか
  • 登場人物:関わっている子の名前(分かる範囲で)、同じ学校か、面識のない相手か
  • 使われたサービス:どのSNS・アプリ・ゲームか。アカウントは本名か匿名か
  • 被害の内容:精神的なもの(不登校・体調不良)、金銭的なもの(課金・送金)、拡散されたものの種類
  • これまでの対応:学校に伝えたか、相手の親と話したか、運営に通報したか、その結果どうなったか
  • 子ども本人の意向:大ごとにしたくないのか、謝罪がほしいのか、転校も考えているのか

最後の「子ども本人の意向」は見落とされがちですが、とても重要です。親が正義感から突き進んだ結果、子どもがかえって学校に居づらくなるケースがあるからです。

学校・警察・公的窓口、それぞれの役割

弁護士の前に(あるいは並行して)使える窓口を整理しておきます。相手がどこの誰かによって、頼るべき先が変わります。

  • 学校:加害側が同じ学校の児童・生徒なら、まず学校です。いじめ防止対策推進法により、学校にはいじめの疑いを把握した場合の調査・対応の義務があります。担任だけで止まりそうなら、学年主任や管理職、教育委員会へと段階を上げる道もあります。伝えた日時と相手、回答内容は必ずメモに残してください
  • 警察:脅迫、恐喝(金銭やアイテムの要求)、性的な画像の要求・拡散など、犯罪に当たり得る行為が含まれる場合。緊急でなければ警察相談専用電話「#9110」や、少年相談窓口が入口になります
  • 法務局の「こどもの人権110番」:全国共通の無料電話相談で、子ども本人からも親からもかけられます。人権侵害の疑いがある事案では、法務局が調査や関係機関への働きかけを行うこともあります
  • プラットフォームの通報機能:投稿の削除だけが目的なら、まず運営への通報です。多くのSNSは未成年者への嫌がらせや無断の画像掲載を規約で禁じています

これらは無料で、弁護士に依頼した後も併用できます。「弁護士か、それ以外か」の二択ではなく、目的ごとに窓口を組み合わせるのが現実的です。

弁護士に相談したほうがよい場面・そうでない場面

正直に言えば、子どものSNSトラブルのすべてに弁護士が必要なわけではありません。

弁護士なしで解決が見込める例

  • 同じ学校の子ども同士のトラブルで、学校が対応に動いてくれている
  • プラットフォームへの通報で投稿が削除され、その後の被害が続いていない
  • 少額の課金トラブルで、決済会社やゲーム運営との手続きで返金の道がある(未成年者の契約は取り消せる場合があります)

弁護士への相談を検討すべき例

  • 相手が匿名で、投稿者を特定しないと止められない(発信者情報開示という法的手続きが必要になります)
  • 性的な画像・動画が絡んでいる
  • 学校に対応を求めたが動いてくれず、被害が続いている
  • 相手方の親から逆に高額な賠償を請求されている
  • 子どもが加害者側とされ、損害賠償や少年事件の話が出ている

子どもが加害者側になった場合、親には監督義務者としての責任が問われる可能性があり、対応を誤ると賠償額や処分に影響することがあります。「うちの子に限って」と反発する前に、事実を確認したうえで、示談交渉の経験がある弁護士に早めに相談する価値があります。ネット上の投稿削除や発信者情報開示は手続きに独特のノウハウがあるため、探すときはネットトラブルの取扱い実績がある弁護士を選ぶとよいでしょう。弁護士を検索では取扱い分野から絞り込みができます。

相談時に聞いておきたい質問例

初回相談は時間が限られています。次のような質問を用意しておくと、限られた時間を有効に使えます。

  • この件で法的に取れる手段は何か。それぞれの費用と期間の目安は
  • 投稿者の特定はどのくらい現実的か。特定できなかった場合、費用はどうなるか
  • 学校や教育委員会への対応は、弁護士名で行うべきか、親が行うべきか
  • 子ども本人を事務所に連れてくる必要はあるか
  • 相手も未成年の場合、賠償の請求先は誰になるのか

費用は事務所によって異なり、削除請求だけか、開示請求や損害賠償まで進むかでも変わります。おおまかな考え方は費用相場で整理していますので、相談前に一度目を通しておくと、提示された金額が妥当かどうかの判断材料になります。

親の役割は「窓口」になること

最後に一番大切なことを。トラブルの渦中にいる子どもにとって、親が感情的になって騒ぎを大きくすることは、二次的な苦痛になり得ます。スマホを取り上げる、勝手に相手に連絡する、SNSで反論する──どれも気持ちは分かりますが、状況を悪化させる典型例です。

親の役割は、探偵でも裁判官でもなく、外部との「窓口」になることです。証拠を守り、事実を整理し、適切な相談先につなぐ。この記事の整理メモがその第一歩になれば幸いです。

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