借金・債務整理

自己破産で失うもの・失わないもの|誤解されやすいポイント

弁護士マップ編集部
6分で読める

その「常識」、ほとんど間違いです

自己破産について、次のような話を聞いたことはないだろうか。

  • 「破産したら全財産を没収される」
  • 「会社をクビになる」
  • 「戸籍に載って、結婚や就職に響く」
  • 「一生ローンが組めなくなる」
  • 「家族の財産まで取られる」

結論から言うと、これらはすべて誤解、または大げさな表現だ。自己破産は借金の返済義務を法的に免除してもらう(免責)ための制度であり、生活の再建を目的として設計されている。破産者を社会から排除する制度ではない。

ところが、この誤解のせいで「破産だけは避けたい」と無理な返済を続け、生活を限界まで削ってしまう人が少なくない。何を失い、何を失わないのかを正確に知ることは、自己破産をするかどうかにかかわらず、判断の出発点になる。

失うもの・失わないもの早見表

項目結論
一定額を超える預貯金・現金失う可能性あり
持ち家・土地原則失う
高価な車・貴金属失う可能性あり
生活に必要な家具・家電・衣類残せる
99万円以下の現金残せる(自由財産)
給料・年金(破産後のもの)残せる
仕事(一般の会社員)続けられる
一部の資格職手続き中のみ制限あり
戸籍・住民票記載されない
選挙権失わない
家族名義の財産対象外
賃貸住宅家賃を払っていれば通常住み続けられる

以下、誤解の多い項目を順に見ていく。

財産:「全部没収」ではなく「一定以上を清算」

破産手続きで処分の対象になるのは、原則として本人名義の財産のうち一定額を超えるものだ。法律上、99万円以下の現金は「自由財産」として手元に残せる。また、多くの裁判所の運用では、預貯金や保険の解約返戻金などについても一定額(20万円が目安とされることが多い)以下なら処分しない扱いがなされている。運用は裁判所によって異なるため、具体的な線引きは弁護士に確認してほしい。

冷蔵庫や洗濯機、ベッド、仕事に使うパソコンといった生活必需品が競売にかけられることは通常ない。「家財道具を差し押さえられて段ボール生活」というイメージは、現実の運用とはかけ離れている。

一方、持ち家は原則として処分対象になる。住宅ローンが残っていれば抵当権が実行され、ローンがなくても換価される。家を残したい場合は、自己破産ではなく個人再生(住宅資金特別条項)を検討することになる。車は、ローン完済済みで価値が低ければ残せることもあるが、ローン返済中なら所有権留保により引き揚げられるのが通常だ。

仕事:解雇理由にならないが、一部資格に「一時的な」制限

自己破産を理由に従業員を解雇することは、法的に正当な解雇理由とは認められないと考えられている。会社に通知が行く仕組みもない(会社から借入がある場合や、退職金見込額の証明書を取る過程で説明が必要になるケースはある)。

ただし、一部の職業・資格には制限がある。代表例は次のとおりだ。

  • 警備員
  • 生命保険募集人
  • 宅地建物取引士
  • 弁護士・司法書士・税理士などの士業

重要なのは、この制限が「一生」ではないことだ。制限がかかるのは破産手続開始から免責許可が確定して復権するまでの期間で、多くのケースでは数か月程度にとどまる。該当する職業の人は、手続きのタイミングを含めて弁護士と設計する必要があるので、依頼時に職業を正確に伝えてほしい。

信用情報:「一生」ではなく「一定期間」

自己破産をすると信用情報機関に事故情報が登録され、クレジットカードの新規作成やローンの審査に通りにくくなる。登録期間は機関により異なるが、免責決定などから5〜7年程度とされることが多い。つまり「一生ローンが組めない」は誤りで、期間経過後に住宅ローンを組んだ人も現実に存在する。

なお、官報には氏名・住所が掲載される。一般の人が官報を日常的に読むことはまずないが、金融関係者などの目に触れる可能性はゼロではない。この点は正直にデメリットとして認識しておくべきだ。

家族への影響:法的にはない、事実上はある

破産はあくまで本人の手続きであり、家族名義の預金や家が処分されることはない。子どもの進学・就職・結婚に法的な影響もない。戸籍にも載らない。

ただし、事実上の影響が2つある。第一に、家族が保証人になっている借金は、本人が免責されても保証人に請求が行く。この場合、保証人側も債務整理が必要になることがある。第二に、本人がしばらくクレジットカードやローンを使えなくなるため、家計の運用に工夫が要る(家族カードや家族名義のローンは原則利用可能)。

免責されないケースがあることも知っておく

自己破産すれば自動的に借金が消えるわけではない。破産法には「免責不許可事由」が定められており、たとえば次のような事情があると免責が問題になりうる。

  • 財産を隠した、特定の債権者にだけ返済した
  • 浪費やギャンブルが借金の主な原因
  • 裁判所や破産管財人に嘘の説明をした

もっとも、ギャンブルが原因でも、事情を正直に申告し手続きに誠実に協力すれば、裁判所の裁量で免責される運用が広く行われている。「ギャンブルだから破産できない」と決めつけて相談をためらうのは、もったいない誤解だ。また、税金・社会保険料・養育費などは免責されても支払義務が残る(非免責債権)ことは押さえておきたい。

弁護士への相談で聞くべきこと

相談の場では、次のような質問をすると自分のケースの見通しがつかみやすい。

  • 私の財産状況だと、手元に何が残りますか
  • 同時廃止と管財事件のどちらになりそうですか(費用と期間が大きく違う)
  • 免責不許可事由にあたりそうな事情はありますか
  • 自己破産より任意整理・個人再生のほうが合う可能性はありますか

費用の目安は費用相場にまとめているが、管財事件になるかどうかで総額が変わるため、見積もりは必ず自分の事情を伝えたうえで取ること。債務整理の取扱いが多い弁護士は弁護士を検索から探せる。

自己破産は「人生の終わり」ではなく、法律が用意したやり直しの制度だ。誤解に基づいて選択肢から外す前に、正確な情報で判断してほしい。

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