刑事事件

保釈の仕組み|保釈金はいくら必要で、返ってくるのか

弁護士マップ編集部
7分で読める

保釈について、多くの人が2つの思い違いをしています。1つ目は「保釈金は罰金のように取られるお金だ」というもの。実際には保釈金は裁判所への預け金で、裁判にきちんと出頭し続ければ、判決の後に原則として全額戻ってきます。2つ目は「逮捕されたらすぐ保釈を頼める」というもの。実は保釈は起訴された後にしか請求できず、逮捕直後の身柄解放には別の手段を考える必要があります。

この2つを押さえるだけで、保釈という制度の見え方はかなり変わるはずです。ここから、仕組みを順番にほどいていきます。

保釈が使えるのは「起訴後」だけ

刑事手続で身体拘束が続く流れは、おおまかに「逮捕(最大72時間)→ 勾留(原則10日、延長で最大さらに10日)→ 起訴」となります。保釈が請求できるのは、このうち起訴された後(被告人になった後)だけです。

つまり、逮捕直後の家族が「すぐ保釈金を積んで出してあげたい」と思っても、制度上それはできません。起訴前の段階で身柄解放を目指す手段は、勾留請求を却下するよう働きかける、勾留決定に不服を申し立てる(準抗告)、勾留の取消しを求める、処分保留や不起訴による釈放を目指す——といった別の弁護活動になります。この段階の動きは時間との勝負なので、早期に弁護士へ相談することが重要です。

保釈には3つの類型がある

保釈の請求を受けた裁判所の判断には、法律上3つの枠組みがあります。

  • 権利保釈:法律の定める除外事由(重大事件である、証拠隠滅を疑う相当な理由がある、被害者や証人に危害を加えるおそれがある等)に当たらない限り、保釈を許さなければならないという原則
  • 裁量保釈:除外事由に当たる場合でも、裁判所が事情を考慮して裁量で許可できるもの
  • 義務的保釈:勾留が不当に長くなったときに認められるもの

実務でよく問題になるのは、否認している事件で「証拠隠滅のおそれ」を理由に保釈が認められにくい、という点です。「罪を認めないと保釈されない」と単純化はできませんが、否認事件の保釈はハードルが上がる傾向があることは知っておくべき現実です。だからこそ、住居の制限や関係者との接触禁止など、裁判所の懸念を打ち消す条件を弁護士がどう設計するかが鍵になります。

保釈金の額はどう決まるのか

保釈保証金の額は、法律で一律に決まっているものではなく、裁判所が事件ごとに決めます。考慮されるのは、犯罪の性質や情状、証拠の状況、そして被告人の資力などです。

重要なのは「被告人の資力」が考慮要素に入っている点です。保釈金は、逃げたら失うと感じる程度の金額でなければ意味がないため、資産が多い人ほど高く、そうでない人には相応の額が設定される建前になっています。つまり相場を一般化することにあまり意味はなく、金額は事件と本人の事情次第です。弁護士に依頼していれば、類似事件の経験から見込み額の目安を聞くことができます。

納付は原則として現金で行いますが、有価証券や、保釈保証書(一定の団体が発行する書面)で代える方法が認められる場合もあります。手元に現金が足りない場合の手段は後述します。

保釈金は戻ってくる:ただし条件がある

保釈金の本質は「約束を守らせるための担保」です。したがって、次の条件を守り抜けば、判決が確定した後などに原則として全額返還されます。有罪判決を受けたかどうかは、返還には関係ありません。

逆に、次のような場合には、保釈が取り消され、保釈金の全部または一部が没取(ぼっしゅ、取り上げられること)される可能性があります。

  • 裁判所の呼出しに正当な理由なく出頭しない
  • 逃亡する、または証拠隠滅をする
  • 被害者や事件関係者に接触するなど、裁判所の定めた条件(住居の制限、旅行の許可制など)に違反する

つまり保釈金が戻るかどうかは、保釈中の過ごし方にかかっています。家族が資金を出す場合は、本人に保釈条件を紙で共有し、家族も一緒に条件を管理するくらいの体制が望ましいです。

なお、実刑判決が言い渡されると保釈は効力を失い、再び収容されます。控訴して再度の保釈(再保釈)を請求することはできますが、認められるかは改めての判断となり、保釈金の額が上がることもあります。

現金が用意できないときの選択肢

保釈金を一時的に用意できない場合、次のような手段が使われています。

  • 親族・知人からの借入れ(保釈金は本人以外の名義でも納付できます)
  • 保釈保証金の立替えを行う民間の支援団体を利用する(手数料がかかります)
  • 保釈保証書の発行制度を利用できる場合もある

いずれも利用条件や費用が異なるため、依頼している弁護士に相談して選ぶのが確実です。弁護士費用そのものの考え方は費用相場も参考にしてください。

なお、決められた保証金額がどうしても用意できない場合、弁護人を通じて金額の再考を求めたり、条件を厚くする(身元引受人を追加する、行動の制限を受け入れる等)ことと引き換えに減額の余地を探ったりする交渉が行われることもあります。「決まった額を払えないから保釈は諦める」と即断する前に、弁護人と選択肢を洗い出してください。

保釈金は「いつ」「どうやって」戻ってくるのか

返還のタイミングも気になるところです。保釈金は、裁判が終わって保釈が効力を失ったとき——具体的には無罪や罰金・執行猶予付き判決などで身柄の拘束が不要になったときや、実刑判決の確定により収容されたときなど——に、没取されていなければ返還の手続がとられます。判決の言い渡しから返還までには事務手続の期間があり、その場で即日現金が戻るわけではありません。納付した名義人の口座に振り込まれるのが一般的なので、親族が立て替えた場合は誰の名義で納付したかを記録しておくとスムーズです。

請求から釈放までの流れ

保釈請求から実際に釈放されるまでは、おおむね次のように進みます。

  • 弁護人が保釈請求書を裁判所に提出(身元引受書や誓約書を添える)
  • 裁判官が検察官の意見を聴く
  • 裁判官が許可・却下を判断(必要に応じて弁護人との面接が行われることもある)
  • 許可の場合、保証金額と保釈条件が決まる
  • 保証金を納付すると、釈放の手続が進む

却下された場合も、不服申立て(準抗告・抗告)や、事情が変わった後の再請求が可能です。1回目の却下で終わりではありません。

この流れの中で、家族に求められる役割が「身元引受人」です。身元引受人は、保釈中の被告人と同居するなどして生活を監督し、裁判所の呼出しに確実に出頭させることを誓約する立場で、通常は配偶者や親が引き受けます。身元引受書には、監督の具体的な方法(同居する、通勤に同行する、連絡を毎日取るなど)を書き込むほど説得力が増します。保釈請求は弁護人が書面を作りますが、その材料を用意するのは家族の仕事です。

保釈中の生活で守るべき条件の実際

保釈が許可されると、裁判所は個別の条件を付けます。よくある条件の例は次のとおりです。

  • 指定された住居に住み、変更には裁判所の許可を得ること
  • 3日以上(裁判所の指定による)の旅行には事前の許可を得ること
  • 被害者・共犯者・事件関係者と直接・間接を問わず接触しないこと
  • 呼出しを受けたら必ず出頭すること

「間接を問わず」という部分は要注意です。本人が直接会わなくても、家族やSNSを介した接触が条件違反と評価されるおそれがあります。また、保釈中も裁判は続いており、公判期日への出頭は絶対です。うっかりの欠席や無断の転居が、再収容と保釈金没取につながりかねません。カレンダーの管理を家族が二重にチェックするなど、体制で守ることをおすすめします。

保釈でつまずきやすいポイント

最後に、実際に相談の場で誤解が多い点をまとめます。

  • 保釈は起訴前には使えない(逮捕直後の釈放は別の手続)
  • 保釈金は罰金ではなく、原則戻ってくる預け金
  • 「お金さえ積めば出られる」わけではなく、証拠隠滅のおそれ等の審査が先にある
  • 保釈中の条件違反は、再収容と保釈金の没取に直結する
  • 実刑判決で保釈は失効する(控訴時は再保釈の請求が必要)

保釈請求は、書面の説得力と条件設計で結果が変わる手続です。刑事事件の取扱い実績がある弁護士を探す際は弁護士を検索を活用してください。依頼を検討する事務所がある場合、利用者の声は口コミ一覧でも確認できます。

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