男女問題

不倫慰謝料を請求されたら|払う前に確認すべきこと

弁護士マップ編集部
6分で読める

ある日突然、身に覚えのある(あるいは半分しかない)内容証明郵便が自宅に届く。「貴殿の不貞行為により多大な精神的苦痛を被った。金○○万円を○日以内に支払え」――不倫慰謝料の請求は、多くの場合こうして一方的に始まります。

動揺して当然です。しかし、ここで知っておいてほしいことが一つあります。請求書に書かれた金額は、あくまで「相手の言い値」です。 その金額を払う法的義務が確定したわけではありませんし、そもそも支払義務自体がないケースもあります。

この記事では、慰謝料を請求された側の視点で、払う前に確認すべきことを順番に整理します。

まず、やってはいけないこと

冷静さを失った状態での行動が、後から自分の首を絞めることがあります。請求を受けた直後は、次の点に注意してください。

  • その場で「払います」と約束しない。口頭でも合意は合意です。一度支払いを認めると、後から「実は義務がなかった」と気づいても覆すのは難しくなります
  • 相手に言われるまま書面(示談書・念書)にサインしない。特に「口外禁止」「違約金」条項付きの書面は要注意です
  • 無視し続けない。内容証明自体に法的強制力はありませんが、放置すると訴訟に発展し、対応の選択肢が狭まります
  • 請求してきた相手に感情的に反論する連絡をしない。やり取りはすべて証拠として残ります

つまり、「認めず、無視せず、感情的にならず」が初動の基本です。

支払義務があるかどうかを分ける4つの視点

不倫(法律用語では不貞行為)の慰謝料は、誰から請求されても常に支払義務があるわけではありません。次の点を一つずつ確認してください。

1. 相手が既婚者だと知っていたか

慰謝料の支払義務が生じるのは、原則として「故意または過失」がある場合です。交際相手が独身だと偽っていて、既婚者だと知る手がかりもなかった――そのような場合、支払義務が否定される余地があります。マッチングアプリのプロフィール、独身と説明していたメッセージなどが手がかりになります。

2. 交際開始時点で夫婦関係がすでに壊れていたか

不貞行為の慰謝料は「平和な夫婦関係を壊したこと」への賠償です。交際が始まる前からすでに別居していた、離婚の話し合いが進んでいたなど、夫婦関係が破綻していたと評価できる場合、慰謝料が否定または大きく減額される可能性があります。ただし「家庭内不和だった」程度では破綻とまでは認められにくく、ここは判断が分かれやすいポイントです。

3. 肉体関係の有無と証拠

法律上の不貞行為は、基本的に配偶者以外との肉体関係を指します。食事やデートだけの関係であれば、不貞行為とまでは言えないケースもあります。相手がどんな証拠を持っているのかも、対応方針を決めるうえで重要です。

4. 時効が完成していないか

不倫の慰謝料請求権には消滅時効があります。被害者が「損害および加害者を知った時」から3年(不法行為時から20年)です。何年も前の関係について突然請求された場合は、時効の可能性を検討する価値があります。ただし、時効は自分から主張(援用)しなければ効果がありません。

金額は妥当か――減額の余地を探る

支払義務自体はありそうだ、という場合でも、請求額をそのまま受け入れる必要はありません。慰謝料の額は、婚姻期間、不倫の期間や態様、夫婦関係への影響(離婚に至ったかどうか)、反省や謝罪の有無など、多くの事情で変わります。

また、見落とされがちなのが求償権の存在です。不倫は既婚者側と二人で行ったものなので、責任も本来は二人で分担します。あなたが全額を支払った場合、既婚者側(不倫相手)に対して負担分を請求できるのが原則です。示談書に「求償権を放棄する」という条項が入っている場合は、その分、支払額を下げる交渉材料になります。

夫婦が離婚しないケースでは、求償権を行使すると結局その家庭にお金が戻る構図になるため、「求償権放棄とセットで減額」という決着は実務上よく使われる形です。

対応の流れ(時系列)

  • 請求書面の内容を記録する。封筒・書面を保管し、回答期限を確認する
  • 事実関係を自分で整理する。交際の経緯、相手の説明、夫婦関係について知っていたことを時系列でメモにする
  • 証拠を保全する。相手とのメッセージ履歴は消さない。「独身だと言われていた」ことを示すやり取りは特に重要です
  • 回答期限までに方針を決める。争う・減額交渉する・支払う、のいずれかです。期限に間に合わない場合も「検討中である」旨の連絡を入れるだけで、いきなり訴訟になるリスクは下がります
  • 示談書を交わす場合は条項を精査する。清算条項(これ以外に請求しない)、求償権の扱い、口外禁止の範囲を必ず確認します

弁護士に相談したほうがよいケース・自分で対応できるケース

すべてのケースで弁護士が必要なわけではありません。請求額が比較的少額で、事実関係に争いがなく、分割払いの相談程度で済みそうなら、自分で交渉して解決する人もいます。

一方、次のような場合は弁護士への相談を検討する価値が高いといえます。

  • 請求額が高額、または一括での支払いが困難
  • 「既婚者だと知らなかった」「夫婦関係は破綻していた」など争える事情がある
  • 相手に弁護士がついている
  • 訴訟を起こされた、または裁判所から書類が届いた
  • 職場や家族に知られたくない事情があり、交渉窓口を任せたい

男女問題の取扱いが多い弁護士であれば、請求額の妥当性や争える点について、初回相談の段階である程度の見通しを示してくれるはずです。お住まいの地域から弁護士を検索できますので、複数の事務所を比較してみてください。相談料や着手金の考え方は事務所によって異なるため、費用相場も事前に把握しておくと交渉しやすくなります。

最後に――「払って終わり」にする前に

慰謝料請求は、支払って示談書を交わせば法的には終わります。しかし、内容の悪い示談書(過大な違約金、あいまいな口外禁止条項など)にサインしてしまうと、その後何年も不安を抱えることになりかねません。

払うにしても、「いくらを」「どんな条件で」払うのかを確認してからでも遅くはありません。請求書の期限は相手が設定したものであり、多少の時間をかけて検討することは正当な対応です。

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