中小企業・個人事業

フリーランスの報酬未払い|フリーランス法と回収の実務

弁護士マップ編集部
5分で読める

「フリーランスは立場が弱いから、未払いはある程度仕方ない」——もしそう思っているなら、前提が変わったことを知ってください。フリーランスと発注事業者の取引を規律する法律、いわゆるフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行され、発注者側に法律上の義務が課されるようになりました。未払いは「交渉力の問題」だけでなく「相手の法令違反の問題」として扱える場面が増えています。

フリーランス法が発注者に課している義務

細かい適用条件はありますが、骨子として、業務委託をする発注事業者には次のような義務があります。

  • 取引条件の明示:業務内容・報酬額・支払期日などを書面やメール等で明示すること。「口約束で仕事だけ振る」は、それ自体が問題になります
  • 報酬の支払期日:原則として、給付を受領した日から60日以内のできる限り早い日に支払期日を設定し、支払うこと
  • 禁止行為(継続的な業務委託が対象):フリーランスに責任がないのに報酬を減額すること、受領を拒否すること、著しく低い報酬を不当に定めること、やり直しの強要など
  • そのほか、募集情報の的確な表示、ハラスメント対応の体制整備、中途解除時の予告などの義務もあります

重要なのは、「支払いが遅い」「一方的に減額された」「検収を口実に受け取ってくれない」といったフリーランスの典型的な悩みの多くが、この法律の義務違反に該当し得るという点です。交渉の場で「フリーランス法上の支払期日の規律に反していると思われます」と指摘できるだけでも、力関係は変わります。

未払いが起きたら、まず証拠を固める

回収の成否は証拠で決まります。次のものを、消える前に保全してください。

  • 契約書・発注書・発注メール・チャットでの依頼のやり取り(仕事を依頼された事実と条件)
  • 納品したデータ・納品連絡・相手の受領や検収の返信(仕事を完了した事実)
  • 請求書と送付記録
  • 「来月払います」など支払いを認める相手の発言(債務承認の証拠として重要)
  • 継続案件なら過去の支払実績(単価や支払サイトの慣行の証拠)

チャットツールは相手側の操作やアカウント削除で見られなくなることがあります。スクリーンショットを日付入りで保存し、可能ならデータをエクスポートしておきましょう。「契約書がないから無理」と諦める必要はありません。メールやチャットの積み重ねで契約内容を立証できるケースは多くあります。

回収のステップ

ステップ1:事実確認と期限付きの催促。まず感情を抜いた事務的な連絡で、金額と支払期日を明記して催促します。相手が「予算の都合で」など事情を語り始めたら、支払義務自体は認めている証拠になるので、やり取りを残します。

ステップ2:公的な無料相談窓口を使う。国の委託事業として、フリーランスの取引トラブルを弁護士に無料相談できる窓口(フリーランス・トラブル110番)が設けられています。費用ゼロで実務的な助言や和解あっせんの仕組みを利用できるため、金額が小さい案件ではまずここを検討する価値があります。

ステップ3:内容証明郵便。期限を切った正式な請求を内容証明で送ります。自分名義でも出せますが、弁護士名義になると相手の対応が変わることが多いのも実情です。

ステップ4:法的手続き。60万円以下なら原則1回の期日で判決が出る少額訴訟、争いがなさそうなら支払督促が使いやすい選択肢です。手数料は請求額に応じた比較的小さな額で、本人での申立ても可能です。金額が大きい場合や相手が争ってくる場合は、弁護士への依頼を検討します。着手金や成功報酬の仕組みは費用相場で解説しています。

取引を続けたい相手に催促するには

「揉めたくない、でも払ってほしい」という板挟みは、フリーランス特有の悩みです。実務的なコツは、催促を「感情の問題」ではなく「事務の問題」として扱うことです。「経理処理の都合上、支払予定日をご確認させてください」という体裁から入り、期限を明示し、期限を過ぎたら段階を一段ずつ上げる。相手にとっても、事務的な催促のほうが応じやすいものです。

ただし冷静に考えたい点もあります。報酬を払わない取引先との関係は、続ける価値があるのか。未払いを許容して仕事を続けると、相手にとって「払わなくても仕事をしてくれる相手」になり、状況はむしろ固定化しがちです。

再発を防ぐ仕組み

  • 着手前に条件(業務範囲・報酬・支払期日)をメールで確定させる。フリーランス法上、明示は相手の義務でもあります
  • 新規の相手やボリュームの大きい案件では、着手金や分割払いを設定する
  • 納品データの完全版は入金確認後に渡す運用(透かし入りプレビュー等)を検討する
  • 支払遅延が一度あった相手には、次回から前払い比率を上げる

未払いの回収は、フリーランスの権利として堂々と進めてよいものです。ひとりで抱えず、公的窓口や、フリーランス・下請取引の案件を多く扱う弁護士を頼ってください。弁護士を検索から地域と分野で探せます。

この記事をシェア

弁護士を探してみる

全国48,000名以上の弁護士情報・口コミ・懲戒処分歴を無料で確認できます。