消費者被害

脱毛サロン・美容医療の中途解約トラブルと返金の考え方

弁護士マップ編集部
7分で読める

意外に思われるかもしれませんが、契約書に「途中解約はできません」「返金には一切応じません」と書いてあっても、その文言どおりに諦める必要はないケースが多くあります。

脱毛サロン(エステ)や一定の美容医療は、特定商取引法の「特定継続的役務提供」という制度の対象になっており、この制度の対象になる契約では、法律が消費者に中途解約の権利を保障しています。法律上の権利は、契約書の記載で奪うことができません。「解約不可」と書かれた契約書を前に泣き寝入りしている人は、まずこの事実を知ってください。

あなたの契約は「特定継続的役務提供」か

すべての契約が対象になるわけではないので、最初にここを確認します。

  • エステ(脱毛サロン含む):契約期間が1か月を超え、支払総額が5万円を超えるもの
  • 美容医療:期間が1か月を超え、総額が5万円を超えるもののうち、脱毛や脂肪溶解など政令で定められた施術

つまり、数十万円のコース契約を組んだ医療脱毛やサロン脱毛の多くはこの制度の対象に入る可能性が高い一方、都度払いや1回きりの施術は原則として対象外です。また「回数券」型の場合も契約の組み方によって扱いが分かれることがあり、微妙なケースは消費生活センターに契約書を見せて確認するのが確実です。

対象になる契約では、事業者には概要書面・契約書面の交付義務があり、消費者には次の2つの強力な権利があります。

権利1:クーリングオフ(契約書面から8日間)

法定の契約書面を受け取った日から8日間は、理由を問わず無条件で契約を解除できます。この場合、支払ったお金は全額返金され、違約金も発生しません。すでに施術を受けていても、その分の対価を請求されないのがクーリングオフの強いところです。

見落とされがちなポイントを2つ。

  • 起算点は「契約した日」ではなく「法定の記載事項を満たした契約書面を受け取った日」です。書面に不備があれば、8日を過ぎていてもクーリングオフできる場合があります
  • 通知は書面や電磁的記録で行います。ハガキなら両面のコピーを取り、特定記録郵便などで発送した記録を残してください

権利2:中途解約(8日を過ぎても、いつでも)

クーリングオフ期間を過ぎても、契約期間中であれば将来に向かって契約を解約できます。これが中途解約権です。このとき事業者が請求できる金額(違約金・損害賠償)には法律で上限が定められています。

エステの場合の上限は、概ね次のとおりです。

  • サービス開始前の解約:2万円まで
  • サービス開始後の解約:すでに受けたサービスの対価に加えて、「2万円」または「契約残額の1割」のいずれか低い額まで

美容医療についても同様に上限が定められています(金額の枠組みはエステとは別に設定されています)。実際の精算は「すでに受けた分の単価をどう計算するか」で争いになりやすく、コース契約の1回あたり単価を通常価格で計算し直して返金額を減らそうとする事業者もいます。精算書の内訳に納得がいかないときは、その場でサインせず、消費生活センター(電話番号188)に相談してください。

つまずきやすい3つの場面

その1:「キャンペーン価格だから解約できない」と言われた

割引価格での契約であることを理由に中途解約を拒む説明は、制度の対象契約であれば通りません。解約時の精算方法に一定の影響が出る場合はありますが、「解約そのものができない」ということにはなりません。

その2:医療ローン(信販契約)を組んでいる

施術代金をローンで支払っている場合、サロンやクリニックとの契約を解約したら、信販会社への支払いについても手続きが必要です。放置するとサービスを受けていないのに引き落としだけが続きます。クレジット契約には、販売店とのトラブルを理由に支払いを一時的に止められる「支払停止の抗弁」という制度があり、書面で信販会社に通知します。これも消費生活センターが書き方を教えてくれます。

その3:施術で肌トラブル・やけどが起きた

ここまでの話は「契約をやめたい」という話でしたが、身体に被害が出た場合は次元が変わります。まず皮膚科など医療機関を受診して診断書を確保し、施術前後の写真を残してください。治療費や慰謝料の請求は解約精算とは別の損害賠償の問題であり、事業者側が争う姿勢を見せた場合は弁護士への相談を検討する段階です。

解約を切り出す実践手順

「解約したい」と伝えるだけのことが、この業界では意外と消耗します。引き止め、上位プランへの切り替え提案、「今解約すると損ですよ」という説得。スムーズに進めるための手順を示します。

  • 契約書面一式を手元に揃える:契約書、概要書面、支払いの記録。契約日と書面受領日を確認し、クーリングオフ期間内かどうかをまず判定します
  • 解約の意思は記録に残る形で伝える:店頭や電話での口頭のやり取りは「言った言わない」になりがちです。メールや問い合わせフォーム、書面など、日付と内容が残る手段を使ってください。中途解約の意思表示は理由を述べる義務はありません。「一身上の都合」で足ります
  • 引き止めには結論だけ繰り返す:「検討します」と言って持ち帰ると、また来店を求められます。解約すると決めたなら、その場で理由の議論に付き合わず、結論だけを繰り返すのが最短です
  • 精算書は持ち帰って確認する:提示された返金額にその場でサインを求められても、「確認してから返答します」で構いません。計算根拠(受けた回数、単価、違約金の額)を書面でもらい、疑問があれば188へ

なお、勧誘の場面自体に問題があった場合──閉店後まで帰してもらえなかった、「今日契約しないとこの価格にならない」と迫られた、効果について事実と異なる説明を受けた──は、消費者契約法にもとづく契約の取消しを主張できる可能性があります。中途解約より有利な清算になり得るため、契約時の状況もセンターや弁護士に伝えてください。

事業者が倒産してしまったら

前払いした回数分を残したままサロンが突然閉店する──近年、大手でも起きている事態です。厳しい現実をお伝えすると、倒産した事業者からの返金は、破産手続きで配当を待つ形になり、全額が戻る可能性は高くありません。

ただし、打てる手が残っている場合があります。

  • ローン・分割払いの人:信販会社への支払停止の抗弁を速やかに通知する。未払い分の支払いを止められれば、被害をそれ以上広げずに済みます
  • 一括前払いの人:破産管財人からの案内に従って債権の届出をする。少額でも配当がある場合があります
  • クレジットカードの一括払いだった場合も、カード会社に事情を伝えて相談する価値はあります

未成年・学生の契約はさらに手厚い保護がある

18歳になったばかりの新成人や学生をターゲットにした高額コース契約は、消費者トラブルの定番です。契約者が未成年(18歳未満)であれば、親の同意なく結んだ契約は原則として取り消すことができます(未成年者取消し)。この場合、クーリングオフ期間や中途解約の枠組みとは関係なく契約をなかったことにできる、強力な保護です。

18歳以上であっても、収入に見合わない高額なローンを「月々数千円だから」という説明だけで組まされたようなケースでは、勧誘方法の問題として争える余地がないか、契約時の状況を含めて相談する価値があります。年齢と契約時の説明のされ方は、相談の際に必ず伝えてください。

どこに相談するか

この分野は、実は弁護士に依頼する前に消費生活センターで解決するケースがかなり多い分野です。解約の申し出方、精算金額のチェック、支払停止の抗弁の通知までは、センターの助言とあっせんで進められることが多いからです。

弁護士への相談を検討するのは、事業者が法律上の義務を無視して争ってくる場合、健康被害の賠償を求める場合、被害額が大きく訴訟も視野に入る場合などです。消費者被害の取扱い実績がある弁護士は弁護士を検索から探せます。依頼した場合の費用感は費用相場を参考にしてください。被害額によっては費用倒れになる可能性も含めて、初回相談で率直に見通しを聞くことをおすすめします。

契約書の「解約不可」の一文は、最後の答えではありません。制度を知っているかどうかで、戻ってくる金額は変わり得ます。

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