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弁護士48,599名の分布を読む――都道府県別データが示す「法的アクセス格差」の実態

弁護士マップ編集部
8分で読める

弁護士は「あなたの街にいるか」という問いから始まる

法的トラブルに直面したとき、多くの人が最初に感じるのは「弁護士に頼めるのだろうか」という漠然とした不安だ。費用への懸念もあるが、そもそも「近くに弁護士がいるのか」という物理的な疑問が先に来ることも珍しくない。

その感覚は、データによって裏付けられる。

日本弁護士連合会の登録情報をもとにまとめたデータベースによれば、2026年7月時点で全国の弁護士総数は48,599名。一見すると大きな数字に見えるが、その分布には著しい偏りがある。以下では、都道府県別の数値を軸に、この「偏在構造」がなぜ生まれ、そして一般の依頼者にとって何を意味するのかを掘り下げていく。


東京一極集中の「数字の重さ」を測る

東京都だけで全国の50%超

最も目を引く数字は、東京都の24,483名という弁護士数だ。全国総数48,599名のうち、東京都だけで50.4%を占める計算になる。

2位の大阪府が5,266名、3位の愛知県が2,233名であることを並べると、東京都と大阪府の差だけで約19,000名以上に達する。東京都の弁護士数は、2位から10位までの都市(大阪・愛知・神奈川・福岡・北海道・兵庫・埼玉・千葉・京都)の合計数をはるかに上回る。

都道府県弁護士数
東京都24,483名
大阪府5,266名
愛知県2,233名
神奈川県1,858名
福岡県1,518名
北海道1,104名
兵庫県1,066名
埼玉県1,010名
千葉県938名
京都府898名

この10都道府県で全体の約79%を占める構造が見えてくる。

下位5県は「3桁」の世界

一方、弁護士数の少ない県を見ると、山形県101名、徳島県95名、高知県90名、島根県78名、そして最少の秋田県77名という数字が並ぶ。

参考データが示す「偏在の指標」は端的だ。東京都24,483名に対し、下位県の平均は約102名。その差は約240倍に及ぶ。

人口差を考慮しても、この格差は人口比では説明しきれない。たとえば島根県の人口は約66万人(総務省推計)で、東京都の約5%程度だが、弁護士数の比率はその10分の1以下となる。人口あたりの弁護士密度で見たとき、地方の薄さが際立つのはデータが示す通りだ。


なぜ弁護士は都市に集中するのか

需要の集積が先か、供給の集積が先か

弁護士の都市集中には、複数の構造的要因が絡み合っている。

第一に、企業法務という大型需要の所在だ。上場企業、大手金融機関、メガバンク、商社といった法的ニーズの大きい主体が東京・大阪に集中している。こうした企業と継続的な顧問契約を結ぶことが安定した業務基盤につながるため、弁護士が都市部を選ぶ合理性は高い。

第二に、司法試験・法科大学院の立地がある。法曹養成機関の多くが東京・大阪・名古屋などの大都市圏に集中しており、修習後にそのまま都市部で就職するケースが多い。地方出身者であっても、キャリア形成の起点が都市圏になりやすい構造が存在する。

第三に、法律事務所のネットワーク効果だ。同業者・裁判所・官公庁などとの日常的な接点は、都市部ほど密度が高い。こうした「情報と人のネットワーク」自体が都市を選ぶ誘因となりうる。

「弁護士過疎地域」という認識

日本弁護士連合会は以前から「弁護士過疎・偏在問題」を課題として認識し、過疎地への弁護士派遣や公設事務所の設置などの取り組みを続けている。しかし今回のデータが示す通り、秋田・島根・高知といった県での弁護士数が依然として2桁〜3桁にとどまっている事実は、構造的な改善の難しさを反映している。

弁護士不足は単に「法律家の数が少ない」という問題ではない。法的支援へのアクセス格差が、その地域に住む市民の権利保護の機会格差に直結するという点で、社会インフラとしての問題でもある。


都市部の「数の多さ」が意味すること

多いから「探しやすい」、ではない

東京都に24,000名超の弁護士が集中しているということは、依頼者にとっては「選択肢が豊富」であると同時に、「適切な弁護士を見つけるための情報収集コスト」が生じることを意味する。

弁護士の専門性は非常に幅広い。離婚・相続・労働・債務整理・刑事・不動産・企業法務・知的財産など、分野によって必要な知識と経験は大きく異なる。数が多いほど分野の細分化も進み、「誰に何を頼むべきか」の判断が難しくなる面もある。

依頼を検討している人は、まず自身の案件がどの分野に属するかを把握し、その分野に実績のある弁護士を探すという手順が重要になる。弁護士を検索する際には、地域と分野を組み合わせて絞り込む機能が実用的に機能する理由がここにある。

費用の地域差という視点

弁護士費用にも地域差が存在しうる点は見落とせない。都市部では競争が激しく、一定の費用相場が形成されやすい一方、地方では弁護士の絶対数が少なく、比較検討が難しい状況が生まれやすい。

また、都市部では法テラス(日本司法支援センター)の活用も含め、複数の選択肢を組み合わせることが現実的だが、地方では選択肢そのものが限られる。案件の種類や緊急性によっては、オンライン相談やリモート対応を活用することで地理的な制約を補う動きも近年広がっている。費用の目安については費用相場のページが参考になる。


弁護士数のデータが「見えていないもの」

登録先≠活動地

注意すべき点として、弁護士数のデータはあくまで「弁護士会への登録地」をもとにしている。東京弁護士会に登録しながら、地方案件を積極的に受任している弁護士も存在する。逆に、登録上は地方でも、実態としての活動拠点が複数の地域にまたがるケースもある。

したがって、登録数のデータは「その地域に弁護士がどれだけいるか」の一つの指標ではあるが、依頼者が実際にアクセスできる弁護士の数とは必ずしも一致しない。

廃業・休業・高齢化という変数

弁護士登録数には、実質的に活動していない登録者が含まれる場合もある。日弁連の統計では弁護士の年齢分布も公表されており、高齢化と新規参入のバランスが地域によって異なる。地方において「登録はあっても実務対応が難しい」ケースが潜在する可能性も、データ解釈の際に留意が必要だ。

懲戒処分件数との関係

弁護士数が多い地域では、当然ながら懲戒申立の絶対件数も多くなる傾向がある。弁護士自治の仕組みの下で、各弁護士会が懲戒手続きを担っているが、地域によって案件処理の密度も異なる。依頼者の立場から弁護士の信頼性を判断する材料の一つとして、懲戒処分データベースを参照することも選択肢に入る。懲戒処分に至るケースの背景には、費用トラブルや連絡不通、利益相反など多様な事情があり、その傾向を知ること自体がリスク回避の一助になる。


地方在住者が法的支援を受けるための現実的な選択肢

「近くにいない」問題への対処

秋田・島根・高知など弁護士の少ない県に住む人が、専門性の高い弁護士に相談しようとしたとき、物理的な距離は大きな障壁になりうる。

この問題に対し、現実的な選択肢として機能し始めているのが、ビデオ通話・電話・メールを活用したリモート相談だ。弁護士法の解釈上、相談や依頼自体に地理的制限はなく、裁判所への出廷が必要な段階でのみ現地対応が求められる。初回相談をオンラインで行い、その後の手続き対応を委任するという形は、特に都市圏外の依頼者にとって現実的な解として広まっている。

ただし、すべての弁護士がリモート対応に積極的なわけではなく、対応可否は個々の方針による。弁護士を探す際には、地域対応範囲についての確認が重要になる。

法テラスの役割

弁護士費用の負担感が大きい場合、法テラス(日本司法支援センター)の審査を経た立替制度の活用も検討に値する。所得・資産が一定要件を満たす場合、弁護士費用の立替および分割返済の仕組みが利用可能だ。この制度は地方においても適用されるが、対応弁護士の数が少ない地域では、制度の実効性に限界が生じる面もある。


データが示す「構造」を知ることの意味

今回見てきた数字は、弁護士の「市場分布」を示すと同時に、法的支援へのアクセスがいかに地理的・構造的な制約を受けているかを映し出している。

48,599名という総数は、日本の人口(約1億2,000万人)に対して決して多い数ではなく、先進国の中でも人口比の弁護士数が低い部類に入る(この点は各国の資格制度の違いもあるため単純比較には注意が必要だが、参照指標としての意味はある)。

加えて、その48,599名の半数が東京都1都に集中しているという事実は、全国均一の法的サービスへのアクセスが現実には実現していないことを示唆する。この構造は、個々の弁護士の判断の積み重ねとして形成されたものであり、一朝一夕に変わるものではない。

依頼者側ができることは、こうした構造を前提として情報収集の方法を選ぶことだ。地域に弁護士が少ない場合でも、都市部の弁護士にリモートで相談するという選択肢があること、費用に不安があれば事前に相場感を把握しておくこと、そして弁護士を探す際には分野と地域の組み合わせで絞り込むという手順を踏むことが、現実的な行動指針になる。

データは問題を解決しないが、問題の輪郭を正確に把握する助けになる。48,599という数字の背後にある偏在の構造を知ることは、あなた自身が法的支援にアクセスするための第一歩として、確かな意味を持つ。

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